猫白血病ウイルス感染症は発症すると様々な病気(FeLV関連疾患)を引き起こします。発症するかしないかは、ウイルスの感染時期やその子の免疫力によっても変わってきます。
目次
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症とは?
猫白血病ウイルスの感染が引き起こす様々な病気の総称です。このウイルスに感染した猫の約23%に白血病やリンパ腫といった腫瘍の発生が報告されています。また、腫瘍だけではなく、免疫不全や貧血など様々な病気を引き起こします。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の原因は?
- 猫白血病ウイルス(レトロウイルス科)への感染
猫エイズ(FIV)もレトロウイルス科のウイルスです。
猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症【猫エイズ】|実際の症状について獣医師が解説
大和市(鶴間・南林間・中央林間)の花岡動物病院では猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症の診断および治療を行っています。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の感染経路は?
- FeLV感染猫との接触
・けんか(咬傷)
・じゃれあい(舐め合い)
・食器やトイレの共有 - 母猫→子猫への感染
・胎盤を介した感染
・乳汁を介した感染
・グルーミング
猫白血病ウイルスは猫科以外へ感染は確認されていません。
ただし、FeLV感染猫は、クリプトストリジウムやサルモネラなどの人獣共通の病原体を持ち込みやすいといわれています。
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の診断は?
- 血液検査
・最も一般的なものはスナップ検査(ELISA)
・スナップ検査では感染してすぐには診断できない、
→最大で3週間経てば感染の確認ができる
・その他に免疫蛍光抗体法(IFA)、PCR法などがある
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の症状と経過は?
FeLVに感染した場合
①ウイルスが排除されて、一過性の感染に終わる場合
②体内でのウイルス増殖は抑えられているが、ウイルスを完全に排除できていない状態(潜伏感染)
③骨髄内でウイルスが増殖する状態(持続感染)
この3つのいずれかの段階に進みます。
感染した時の年齢や免疫力によって、どのケースになるのか変わってきます。
①一過性の感染に終わる場合
- ウイルスに感染した場合でも、猫の体内からウイルスが排除される
・成猫の場合には、ウイルスを排除する場合が多い
・急性期症状がみられる場合と無症状の場合がある - 急性期症状
・発熱、元気食欲低下、リンパ節の腫れ
・白血球減少、血小板減少 - 検査(ELISA,PCR)で〝陽性〟と判断されても、感染から16週間以内に〝陰性〟となる
②潜伏感染となる場合
- 検査(ELISA,PCR)で〝陽性〟となり、その後〝陰性〟と変わる
- 他の猫への感染性はないと考えらているが、感染母猫は子猫へ妊娠、出産、授乳などによってウイルスを感染させることがある
- ステロイドの投与やストレスなどによってウイルス血症になることがある
③持続感染となる場合
- 感染して4ヶ月以上、ウイルス血症(検査で〝陽性〟)が続く状態
- 6週齢以下の子猫が感染した場合には、高い割合で持続感染となる
- ほとんどが3年以内にFeLV感染に関連した病気を起こす
・造血器系腫瘍(リンパ腫、白血病、骨髄異形成症候群)
・再生不良性貧血
・赤芽球瘻
・流産
・脳神経疾患
・猫汎血球減少症
・免疫不全に関連した病気
・免疫介在性溶血性貧血などの免疫介在性疾患
糸球体腎炎
ヘモバルトネラ症
猫伝染性腹膜炎
トキソプラズマ症
クリプトコッカス症
口内炎
気道感染症
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の治療は?
- 症状を和らげる治療がメイン(対症治療)
- インターフェロン治療
・ウイルスの増殖を抑える - ウイルスを排除する方法は今のところない
・様々な抗ウイルス薬が検討されているが、残念ながら現段階で効果的な薬は見つかっていない - FeLV関連疾患には、それぞれに対しての治療
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症の治療の見通しは?
持続感染した猫の大多数は3年以内にFeLV関連疾患を発症してしまいます。FeLV関連疾患には様々なものがあり、これらを発症した場合には、ほとんどの場合完治させることができません。発症した病気によっても異なりますが、数ヶ月から数年で亡くなってしまうことが多いです。
猫白血病気ウイルス(FeLV)感染症を予防するには?
- 感染の予防
- 感染した猫の発症の予防
①感染の予防
- FeLV感染猫との接触を避ける
・完全室内飼育 など - ノミダニの駆虫
・同居猫間での感染のリスク - ワクチン接種
・100%予防できる訳ではない
②感染した猫の発症の予防
- 十分な栄養
- ストレスを避けた生活
・完全室内飼育
・避妊去勢の実施
- Small Animal Internal Medicine 4th