うちの猫のがリンパ腫と診断されました。
抗がん剤治療を提案されたのですが、治すことはできるでしょうか?
治すことができない場合には寿命はどれくらいになりますか?
残念ながら完全に治す(完治)ことは出来ない病気です。
治療によって〝寛解〟の状態を維持していくことが目標となります。
〝寛解〟とは症状が安定して落ち着いている状態で、見た目上は治っているように見えます。
リンパ腫のタイプによって、この寛解の状態に持っていけるのか、もしくはどれくらいの期間寛解の状態を維持できるのかが変わってきます。
猫のリンパ腫とは?
固形臓器(リンパ節、肝臓、脾臓など)に発生するリンパ系悪性腫瘍で、骨髄で発生するリンパ性白血病とは区別されています。
猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)感染があると、リンパ腫の発症リスクが高くなることが知られています。
リンパ腫は発生場所や悪性度、腫瘍細胞の表現型などで細かく分類され、それぞれのリンパ腫でその治療方法や治療の見通し(寿命)が大きく変わってきます。
猫のリンパ腫の原因は?
- 猫白血病ウイルス(FeLV)の感染
- 猫免疫不全ウイルス(FIV:猫エイズ)の感染
- 受動喫煙で発症リスク2.4倍、5年以上の暴露で約3.2倍
- 何らかの遺伝子の異常によって起こると考えられている


猫のリンパ腫の発症は?
- 発症の年齢は2峰性
👉約2歳齢で最初のピーク、約10〜12歳で第2のピーク
👉最初のピークではFeLV陽性(+)、第2のピークではFeLV陰性(−)がほとんど - 猫白血病ウイルス(FeLV)の感染があるとリンパ腫発症リスクが高い
👉以前の報告では、リンパ腫の猫の約70%が猫白血病ウイルス(FeLV)の感染があるといわれていた
👉近年では、猫の飼い方の変化やワクチンなどの普及によりリンパ腫の猫のFeLV感染率は減少傾向 - 猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染があるとリンパ腫発症リスクが高い
👉リンパ腫の発症率は約6倍
👉さらにFeLV感染もあるとリンパ腫発症率は75倍以上 - シャム猫に好発
猫のリンパ腫の種類は?
- 消化器型(最も多い)
- 縦隔型
- 多中心型
- 節外型(様々な器官や組織)
- 低悪性度
- 中間悪性度
- 高悪性度
細胞診と病理検査で判定します。
- T細胞性リンパ腫
- B細胞性リンパ腫
猫のリンパ腫の症状は?
- 体重減少
- 食欲不振
- 元気消失
- 多飲多尿(高Ca血症の時)
- 嘔吐
- 食欲不振
- 下痢
- 体重減少
- 多飲多尿
- 呼吸困難
- 呼吸促迫
- 発咳
- 吐出
- リンパ節の腫脹(猫ではあまりない)
- 嗜眠
- 中枢神経系リンパ腫
👉様々な神経症状 - 眼リンパ腫
👉盲目、眼脂、羞明(目がショボショボ) - 腎リンパ腫
👉多飲多尿、沈うつ - 皮膚リンパ腫
👉様々な皮膚症状
猫のリンパ腫の診断は?
- 身体検査
👉体表リンパ節の腫大 - 血液検査
👉血液中に腫瘍細胞が認められることががある(ステージ5)
👉貧血
👉血小板減少症
👉高Ca血症(犬より発生は少ない) - 血液凝固系検査
- 細胞診(FNA:針吸引)
👉リンパ節の細胞診
・リンパ腫かどうかのチェック
👉肝臓・脾臓の細胞診
・転移のチェック - 病理検査
👉診断の確定 - 遺伝子検査
👉リンパ腫の診断補助(T/B細胞系統の鑑別) - 骨髄検査
👉骨髄への転移をチェック - レントゲン検査
- エコー検査
- CT
- MRI
①リンパ腫かどうか?
②リンパ腫の場合には高悪性度なのか低悪性度なのか?
をチェックします。
高悪性度か低悪性度かで、治療方針や治療の見通しは大きく変わってきます。
猫のリンパ腫の治療は?
- 化学療法(抗がん剤治療)が中心
👉ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロンを組み合わせたCHOP療法が第一選択
👉1〜2週間に1回の抗がん剤注射を約6ヶ月継続する方法が主流
- 消化器症状などあれば抗がん剤治療
👉クロラムブシルまたはメルファランとプレドニゾロンを併用
孤立した病変がある場合や、特定の部位の病変によって著しく生活の質が落ちる場合には、外科治療や放射線治療も考えます。
猫のリンパ腫の治療 抗がん剤治療の副作用は?
- 骨髄抑制
👉好中球減少症、血小板減少症
👉免疫力の低下 - 消化器毒性
👉嘔吐、下痢 - 肝毒性
- 腎毒性
- アレルギー
抗がん剤治療をしている症例の約10%で副作用が発生します。
また、それぞれの抗がん剤で注意すべき副作用が変わってきます。
猫のリンパ腫の治療のみとおしは?
- リンパ腫は多くの場合、命に関わる病気です。
- リンパ腫の種類によって、治療法や治療の見通し(予後)が大きく変わってきます。
👉高悪性度リンパ腫or低悪性度リンパ腫
👉遺伝子型:T型orB型
👉発生場所による分類 - 猫のリンパ腫の治療の見通しは、犬のリンパ腫ほど確立されていません。
- 抗がん剤治療の完全寛解率は50〜70%
- 寛解期間中央値は約4ヶ月
- 生存期間中央値は約6ヶ月
抗がん剤治療(CHOPプロトコール)で完全寛解したFeLV感染のない猫は、長期生存の可能性が高く、診断後1.5年生存が約30%と言われています。
- ステロイドおよびクロラムブシルの併用で生存日数の中央値が600から700日を超える
- Small Animal Internal Medicine 4th
- Withrow &MacEwen’s Small Animal Clinical Oncology 4th
- Small Animal Oncology