犬の緑内障 まとめ

犬の緑内障
目次

犬の緑内障とは?

緑内障とは、視神経の損傷が進行していく病気で最終的に失明につながります。一般的には眼の中の圧力(眼圧)が高くなることで緑内障が起こります。一度緑内障で失明に至った眼は、視覚を回復することが出来ません。通常は徐々に進行して視覚異常から失明へと移行する病気ですが、犬の場合には視覚異常を訴えることがないため、症状に気付いて受診した時には既に失明している場合も少なくありません。

緑内障では必ず眼圧が上がる訳ではありません。
しかし、実際の診療では〝眼圧が高い=緑内障〟として治療を行うことがほとんどです。

犬の緑内障の原因は?

犬の緑内障は、原因によって①原発性緑内障②続発性緑内障③先天性緑内障の3つに分類されます。

緑内障の分類
  • 原発性緑内障
    ・他の眼の病気がなく眼圧が上がる。
    ・房水(眼内液)の排泄が阻害されて眼圧が上がる。
    ・多くは遺伝性
    ・多くは両眼に発症(発症の時期はそれぞれ)
    ・さらに開放性隅角緑内障と閉塞性隅角緑内障に分類
  • 続発性緑内障
    ・他の眼の病気によって房水(眼内液)の排泄が阻害されて眼圧が上がる。
    ・続発性緑内障を引き起こす病気
      水晶体脱臼
      眼内腫瘍
      網膜剥離
      ぶどう膜炎 など
  • 先天性緑内障
    ・先天的な眼の形成異常により、生後すぐに眼圧が上昇する

犬の緑内障の発症は?

  • 原発性緑内障の好発犬種
    柴犬、シーズー、コッカースパニエル、チワワ、ビーグル
  • 中年齢以上での発生が多い
  • 原発性緑内障の場合には両眼に発症することが多い

犬の緑内障の症状は?

  • 赤目(充血)
  • 眼の濁り(角膜白濁)
  • 眼のしょぼつき(痛み)
  • 眼を閉じている(痛み)
  • 眼の拡大(牛眼)
  • 目が見えていない様子(視覚異常)
    ・物にぶつかる
    ・ご飯やお水の場所が分からない
    ・じっとして動かない

片目だけの発症では、視覚の異常に気づけないことが多いです。

犬の緑内障の診断は?

  • 視覚検査
  • 眼圧検査
    👉正常の眼圧は10〜20mmHg
  • 眼底検査
  • エコー検査

犬の緑内障の治療は?

治療の目的は、眼圧を下げて視神経への障害を減らすことです。理想は治療によって視覚を温存することですが、既に失明した眼に対しても、以下の目的で眼圧を下げる治療を積極的に行います。

①痛みを和らげるため
②二次的な角膜障害を予防するため

内科的治療

  • 点眼薬
    ・房水産生抑制
      →炭酸脱水素阻害薬
     βブロッカー
    ・房水排泄促進
      →プロスタグランジン製剤
  • 注射薬(点滴)
    ・硝子体容積減少
      →浸透圧利尿薬

外科的治療

  • 視覚のある眼に対して行う外科治療
    👉房水産生抑制
    ・毛様体光凝固術
    👉房水排泄促進
    ・前房シャント術
  • 視覚のない眼(失明)に対して行う外科治療
    👉痛みをなくすための治療
    ・眼球摘出術
    ・眼球内義眼挿入術
    ・硝子体内ゲンタマイシン注入術

犬の緑内障の治療のみとおしは?

原発性緑内障は進行性の病気のため、治療は一生涯に渡って必要になることが多く、治療を行っても進行する場合があります。 両眼での発症が多いので、現在発症していない眼に対しても予防的な治療が必要です。続発性緑内障では、原因となる病気が治療できれば、眼圧を下げることができます。

在宅緩和ケア専門動物病院「犬と猫の緩和ケア」
  • Small Animal Ophthalmology
  • 『犬の緑内障のインフォームドコンセントのために』
     SA Medicine Vol.15 No.3 2013 
目次