犬の短頭種気道症候群について|ご家庭での管理のポイントを獣医師が解説

うつ伏せのパグ

「犬の短頭種気道症候群って何だろう?」
「短頭種を飼っているがうちの子は大丈夫?」
「気をつけるべきことはあるの?」
以上のように思われたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

短頭種気道症候群とは、短頭種の犬特有の呼吸器系の病気をまとめた呼び方です。
可愛らしいお顔の短頭種の犬たちですが、短頭種特有の病気があると言われたらとても心配ですよね。

今回は犬の短頭種気道症候群について解説し、ご家庭での管理について詳しく紹介します。

ぜひ最後までお読みいただき、ご家庭での愛犬のサポートにお役立てください。

目次

短頭種気道症候群とは

短頭種気道症候群とは、短頭種に特徴的な上気道(鼻から喉まで)の形が原因で起こる病気全般のことを指します。
短頭種の代表的な犬種は以下です。

  • パグ
  • フレンチブルドッグ
  • シーズー
  • ペキニーズ
  • ボストンテリア
  • ブルドッグ

短頭種の犬には生まれつき以下のような特徴があります。

  • 鼻の穴が非常に狭い
  • 鼻の中の空気の通り道が狭い
  • 口内の軟口蓋と呼ばれる部分が長く分厚い
  • 気管の形成が不十分で細い

上記の特徴から短頭種の喉には慢性的に圧がかかっている状態です。
喉に圧がかかり続けると、喉の奥の一部が反転して気道を塞ぐと言った二次的な異常を起こすこともあります。
短頭種気道症候群は生涯にわたり慢性的に進行していきます。

短頭種気道症候群の症状

短頭種気道症候群の犬では以下のような症状が見られます。

  • ブーブー、ガーガーといった異常な呼吸音がする
  • いびきをかく
  • 呼吸が苦しそうにする
  • 運動してもすぐに動かなくなる
  • 運動後に失神する
  • 舌がすぐ青紫色になる
  • 睡眠時に無呼吸になることがある

異常な呼吸音やいびきも、犬を飼い始めた時から見られる症状であることも多いです。

子犬の頃から見られる症状だと、普通のことだと思ってしまいそうですよね。

上記の症状が深刻化すると呼吸困難命に関わる状態に陥ることもあります。
症状は特に暑い時や興奮した時に出やすいため、注意が必要です。

短頭種気道症候群の管理

短頭種気道症候群の管理には以下のようなものがあります。

  • 体重管理
  • 環境の調整
  • 内服薬の使用
  • 外科手術

各治療とご家庭での管理のポイントについて解説します。

体重管理

肥満の犬では気道が圧迫され、短頭種気道症候群の症状が出やすくなります。
さらに肥満により心臓への負担が大きくなるため、深刻な状態に陥りやすくもなります。
短頭種気道症候群の症状を悪化させないために体重管理が重要です。
減量用療法食の利用や運動が効果的でしょう。
ただし、短頭種の犬は暑い環境や興奮時に症状が悪化しやすいものです。

できる限り涼しい時間帯に散歩をしたり、散歩時間を短めにし、激しい運動は避けると良いですね。

環境の調整

短頭種の犬は体温が上がりやすい傾向にあり、熱中症になる可能性があります。
体温が上がると症状も悪化するため、涼しい環境を保ち犬の体内に熱がこもらないように心がけましょう。
室温を低めに設定し、扇風機等で室内の空気を循環させることがおすすめです。

熱中症予防のためには水分摂取も重要です。
短頭種の犬は鼻先が短いため、通常の器では鼻や目まで水に浸かってしまうことがあります。
鼻まで水に入ると苦しいのはもちろんのこと、犬が嫌がり水を飲まなくなってしまっては困ります。

高低差のある器やボトルタイプの給水器等、愛犬に合う形を探してみてくださいね。

内服薬の使用

短頭種気道症候群の症状が軽度な場合には、体重管理や環境の調整に加え、内服薬を使用します。
主な内服薬は以下のようなものです。

  • ステロイド
  • 抗炎症薬
  • 気管支拡張薬

上記の薬を組み合わせることで狭くなった気道を広げ、犬が呼吸しやすい状態を維持していきます。

外科手術

短頭種気道症候群の症状が徐々に悪化している場合には、外科手術を行います。

外科手術には以下のようなものがあります。

  • 鼻の穴を広げる手術
  • 軟口蓋の一部を切除する手術
  • 反転した喉の一部を切除する手術

症状が深刻化してからの手術は麻酔中の窒息事故が起こりやすく危険です。
症状がある犬では手術のタイミングを適切に判断することが重要となります。
当院では内科的治療を行いながら、手術の必要性やタイミングを判断することが可能です。
手術が必要となった際には外科を得意とする動物病院へご紹介いたします。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
短頭種気道症候群は短頭種の犬の多くが生まれつき持っている病気です。
時間の経過と共に進行していきますので、飼い主様による日常的な観察がとても重要です。
愛犬の様子に気になることがあれば、早めに動物病院へかかりましょう。
短頭種気道症候群の犬は興奮によって呼吸状態が悪くなります。
動物病院にいくと興奮してしまう場合には、往診も行っております。

通院が難しい場合や短頭種気道症候群についてご相談がある場合には、お気軽に当院へご連絡ください。

在宅緩和ケア専門動物病院 犬と猫の緩和ケア
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