犬の肺水腫の緩和ケア|自宅でできるサポートについて解説
肺水腫は、犬の肺に余分な液体がたまることで呼吸困難を引き起こす深刻な状態です。
特に心臓病を抱えている犬では発症リスクが高く、進行すると命に関わることもあります。
「肺水腫って何が原因でなるの?」
「肺水腫と診断されたけど自宅でできることはある?」
「肺水腫って予後が悪いの?」
などと思われる方もいると思います。
今回は肺水腫について解説したうえで、愛犬が少しでも快適に過ごせるようにするための緩和ケアについて詳しく紹介します。
ぜひ最後までお読みになって、肺水腫になった犬のサポートができるように知識を深めましょう。
犬の肺水腫とは?
犬の肺水腫とは、何らかの原因で肺の中に異常な量の水分がたまり、正常な呼吸ができなくなる病気です。
肺に水分が増えることで酸素を十分に取り込めなくなり、重症化すると命に関わる病気です。
犬の肺水腫の主な原因
肺水腫の原因は、大きく分けて心原性肺水腫と非心原性肺水腫の2つがあります。
心原性肺水腫
心原性肺水腫は心臓が原因となる肺水腫です。
心臓のポンプ機能が低下することで肺に水が溜まります。特に以下の病気を持つ犬は注意が必要です。
- 僧帽弁閉鎖不全症(小型犬に多い)
- 拡張型心筋症(大型犬に多い)
- 先天性心疾患
非心原性肺水腫
非心原性肺水腫は、心臓に問題がなくても、以下のような要因で肺水腫起こる肺水腫のことです。
- 感電
- 外傷
- 重度の感染症
- アレルギー反応
非心原性肺水腫の場合、原因を取り除けば回復するケースもありますが、重症化すると命に関わることに変わりはありません。
犬の肺水腫の症状
肺水腫の症状は、初期は
- 咳が増える
- 軽い息切れ
- 落ち着きがなくなる
などの症状から始まり、
- 安静にしていても呼吸が荒い
- 舌や歯茎が紫色になる(チアノーゼ)
- 泡を含んだ白い鼻水や痰を吐く
といった症状に進行していきます。
重度の場合では、意識を失ったりぐったりして動けなくなったりするなどの命に関わる症状が出ることがあるため、咳をしているなと思ったら早めに動物病院を受診しましょう。
犬の肺水腫の治療
犬の肺水腫では呼吸を楽にするために、酸素吸入が行われます。
また心原性の場合には心臓の負担を和らげるために
- 利尿剤
- 血管拡張薬
- 強心薬
などを使って治療を行います。
非心原性の場合は、原因となっている病気の治療を行っていくのが一般的な治療です。
犬の肺水腫の予後は?
肺水腫の予後は原因によって異なります。
心原性肺水腫の場合、多くは慢性疾患のため、完治は難しいですが、薬やケアで症状を管理しながら生活を続けることは可能です。
非心原性肺水腫の場合、原因が取り除かれれば回復の可能性があるものの、重症化すると肺にダメージが残ることもあります。
心臓病が原因の場合、平均余命は数ヶ月〜数年と個体差がありますが、適切な治療と緩和ケアで犬の生活の質を向上させることができます。
肺水腫の緩和ケア
肺水腫のように完治が難しい病気の場合に、犬の苦痛をできる限り減らしながら、治療をしていく方法を緩和ケアといいます。
緩和ケアの目的は犬の生活の質を維持・向上させることです。
肺水腫の犬に対しては呼吸を楽にするための管理やストレスを減らすケアが重要になります。
もちろん病院での治療だけではなく、ご自宅でもできるケアはあるのでご紹介しましょう。
犬の肺水腫のご自宅でのケア
犬が肺水腫になった場合に、ご自宅でケアをしながらなるべく犬の生活の質をあげることは緩和ケアの一環です。
肺水腫の犬は、とにかく呼吸を楽にしてあげることが重要です。
犬の呼吸を楽にするために、ご自宅でできることをご紹介していきます。
内服の使用
動物病院で処方された利尿剤などを適切に使用し、病気の悪化を防ぎます。
症状に応じて使用する薬も変わってくるので、定期的に動物病院で診察を受けるか、往診に来てもらうことで内服の内容を確認しましょう。
環境の整備
ご自宅での環境作りも大切です。
肺水腫の犬にとって高い湿度は呼吸困難を悪化させるため、40〜50%程度の湿度を保ちましょう。
また、興奮やストレスを減らす環境作りによって、犬が落ち着ける場所を作ることも重要ですね。
食事の工夫
肺水腫の犬は、食事も工夫が必要です。
心臓に負担がかかっている場合には、低ナトリウムの食事を心がけましょう。
また、食事時間も長引くと苦しくなってしまうため、消化の良いフードを少量ずつあげるようにしてください。
酸素室の導入
犬の呼吸が苦しい時は、酸素室などを使用することで、呼吸を助けることができます。
酸素室はレンタルすることも可能です。
酸素室についてはこちらの記事でも解説していますので、よければ参考にしてみてください。

無理な運動を避ける
肺水腫の犬に過度な運動は禁物です。
散歩は短時間でゆっくりさせて、興奮させないことを心がけましょう。
まとめ
犬の肺水腫は、心臓病や外傷などが原因で肺に水がたまる病気で、進行すると命に関わります。
治療によって症状を抑えることは可能ですが、慢性的な肺水腫の場合は緩和ケアがとても重要です。
愛犬が少しでも快適に過ごせるように、ご自宅でも環境・食事・薬の管理・ストレス対策を工夫しながら、できる限り負担を減らすことを心がけましょう。当院では緩和ケア科をもうけています。
肺水腫になった犬にできることがわからないという場合には遠慮なくご相談ください。
犬の生活の質を上げるために、ぜひ一緒にいい方法を探していきましょう。
