猫の皮下点滴について|自宅で出来る点滴と緩和ケアを獣医師が解説

テーブルの上でうつ伏せで寝ているキジトラ猫

猫の皮下点滴について|自宅で出来る点滴と緩和ケアを獣医師が解説

猫は年齢を重ねるにつれ、病気や老化による体調不良が起こるようになります。
場合によっては、治すことの難しい病気にかかることもあります。
治療は重要ですが、痛みや苦しみをやわらげる緩和ケアも同じぐらい大切です。
自宅で実施できる緩和ケアのひとつに、皮下点滴があります。

今回は猫の皮下点滴による緩和ケアについて解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、愛猫に皮下点滴が必要になったときのためにお役立てください。

点滴をされる猫
目次

猫の皮下点滴とは

猫の皮下点滴は、皮膚の下に針を刺して点滴用の液体を注入する方法です。

猫の皮下点滴の効果は大きく分けて以下の3つです。

  • 脱水の改善
  • 食欲・活動性の改善
  • 各臓器への血流の改善

ひとつずつ見ていきましょう。

脱水の改善

皮下点滴は病気の猫に水分と電解質を補給することで脱水状態を改善します。
病気の猫は水分を十分に摂取できず脱水に陥りやすいです。
脱水を改善するだけで猫の気分の悪さが緩和されます。

食欲・活動性の改善

脱水が改善すると食欲や活動性が改善します。
そのため、病気で食欲がなくなっている猫にも皮下点滴は有効です。
病気による気分の悪さが緩和されて、食欲や元気が出ることがあります。

各臓器への血流の改善

脱水が改善すると各臓器への血流が改善します。
特に慢性腎臓病の猫では腎臓への血流改善は大切です。
腎臓への血流が改善することで老廃物の排出を助けることができます。

猫の皮下点滴のやり方

猫の皮下点滴は往診でも実施できる点滴です。
静脈点滴と違って、血管ではなく背中の皮膚の下に針を入れて点滴用の液体を注ぎます。
皮下点滴の所要時間は10〜20分程度であり、短時間で実施できます。
注入された液体は数時間かけて皮膚の下からゆっくり体に吸収されるため、猫にとっての負担は小さいです。
また静脈点滴と違って入院が必要なく、往診の際でも実施できます。
そのため、緩和ケアの場面でもよく使われています。

爪研ぎの中で寝ているキジトラの猫

猫の皮下点滴の適応と不適応

猫の皮下点滴はとても有効な治療ですが、適応できる場合とそうでない場合があります。
猫の状態を把握して皮下点滴を実施できるかどうか適切に判断することが重要です。

猫の皮下点滴の適応と不適応について解説します。

猫の皮下点滴の適応

猫の皮下点滴は緩和ケアとしては特に以下の3つの場合で実施されます。

  • 慢性腎臓病
  • 末期がん
  • 老衰

それぞれについて解説します。

慢性腎臓病

慢性腎臓病の猫の治療では、点滴はとても重要です。
腎臓の働きが弱まると、水分を体内に保つことができず脱水を起こします。
また、慢性腎臓病は老廃物の排出がうまくいかない状態です。
皮下点滴によって脱水を改善し、老廃物の排出を助けることができます。
慢性腎臓病は根治させることができない病気ですが、皮下点滴によって症状を緩和させることで生活の質を向上させることができます。

末期がん

猫の末期がんに対しても、皮下点滴が使われることがあります。
がんが進行すると十分に食事や水分をとれなくなり、脱水・栄養不足の状態になります。
手術や抗がん剤などの治療を選択できない場合には、皮下点滴によって脱水を改善させて症状を緩和することも大切な選択肢の一つです。

老衰

老衰の場合も皮下点滴を実施することがあります。
高齢の猫では、多くの検査を実施しても体調不良の原因がわからないことも多いです。
原因のわからない体調不良の中には老衰である場合も含まれます。
皮下点滴によって水分補給を助けることで、元気や食欲が改善することが期待できます。

猫の皮下点滴の不適応

猫の皮下点滴は緩和ケアとして有効な方法ですが、不適応な場合もあります。
特に以下の3つの場合は皮下点滴を行うかどうかは慎重に判断しないといけません。

  • 心臓病の場合
  • 腹水・胸水がたまっている場合
  • 体がむくんでいる場合

これらの状態の猫は水分を摂取しても排出することが難しい状態であるため、皮下点滴によって水分が過剰になり呼吸が悪化する危険性があります。
獣医師に愛猫の状態をしっかり把握してもらった上で、皮下点滴を実施するかどうかを相談しましょう。

自宅でもできる皮下点滴

皮下点滴は自宅でも実施することができます。
慢性疾患がある猫や高齢の猫の治療では、頻繁に皮下点滴を行うことも珍しくありません。
必要な治療とはいえ、頻繁な通院は猫に少なからずストレスを与えます。
往診の獣医師であれば自宅で皮下点滴を行えるため、猫の通院ストレスを減らすことができます。
また、ご家族が自分で皮下点滴を実施することも場合によっては可能です。
費用や時間の都合のため頻繁に往診を頼むのが難しい時もあるでしょう。
自分で皮下点滴をすることで、より細やかな緩和ケアができるようになります。

当院では飼い主様への皮下点滴の指導もさせて頂いております。

猫の状態や性格にもよるため、まずは獣医師と相談してみてください。

まとめ

皮下点滴は猫への負担の少ない水分補給の方法であり、緩和ケアとしても有用な方法です。
皮下点滴によって、高齢や病気による不調を緩和することができます。
通院が難しくなった猫には、往診による皮下点滴もひとつの選択肢です。
場合によっては、飼い主様自身で皮下点滴をすることもできます。

当院は往診による皮下点滴を含めた緩和ケアを行っており、最期まで寄り添う医療を提供させて頂いております。
愛猫が少しでも穏やかに過ごせるような緩和ケアをご希望の方はお気軽にご相談ください。

在宅緩和ケア専門動物病院 犬と猫の緩和ケア
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