猫の便秘には様々な原因があります。
便秘が続くと巨大結腸症という病気を引き起こすことがあります。
目次
猫の便秘とは?
排便困難や排便回数の減少が見られることを『便秘』といいます。猫では様々な原因で便秘を起こしますが、その原因に応じて適切に対処できないと巨大結腸症を引き起こすこともあります。結腸はゴムのように伸縮性があり、その伸縮する力を使って排便を促します。巨大結腸症ではこのゴムが伸びきっている状態となり、うまく排便ができなくなります。巨大結腸症に対して薬での治療を行うこもありますが、最終的には結腸の切除が必要となる場合も多いです。
猫の巨大結腸症
猫の巨大結腸症には以下の2つのタイプがあります。
①原因の分からない特発性巨大結腸症
②便秘に続発する巨大結腸症
特発性巨大結腸症では結腸の機能を回復することが難しいため、最終的には手術(結腸切除術)が必要となることが多いです。
便秘に続発する巨大結腸症は、便秘を引き起こす病気を適切に治療できれば治る可能性があります。ただし、適切な治療が出来ないと回復が出来ない巨大結腸症に進行してしまう可能性があります。この状態になってしまうと、内科的な治療ではなかなか効果がなく、最終的には手術となることが多いです。
猫の便秘の症状は?
- 排便回数の減少
- 排便時の痛み
- トイレで排便姿勢を繰り返す
- トイレでずっと座っている
- 少量の固い便
- 絞り出したような便
- 下痢
- 血便
便秘が長期に続いた場合には…
- 食欲低下
- 元気低下
- 体重減少
- 下痢
猫の便秘の原因は?
- 神経筋機能不全
・特発性巨大結腸症
・加齢
・腰仙部髄損傷
・馬尾症候群
・仙髄変形(マンクス)
・自律神経不全 - 機械的閉塞
・異物(骨・植物・毛玉)
・腫瘍
・直腸憩室
・会陰ヘルニア
・直腸肛門狭窄
・骨盤骨折
・骨盤狭窄 など - 炎症
・肛門周囲瘻
・直腸炎 など - 代謝性および内分泌性
・脱水
・低カリウム血症
・高カルシウム血症
・甲状腺機能低下症
・肥満
・二次性栄養性上皮小体機能亢進症 - 薬物
・オピオイド作動薬(痛み止め)
・抗コリン作動薬
・利尿剤 など - 環境・行動
・汚れたトイレ
・活動性低下
・入院・ホテルなど環境の変化 など
重度の便秘症の場合には、下記のいずれかの病気の可能性が高いと言われています
①特発性巨大結腸症(62%)
②骨盤狭窄(23%)
③神経損傷(6%)
④マンクスの仙髄奇形(5%)
猫の便秘症の発症は?
- いずれの年齢・性別・品種の猫でも見られる可能性がある
- 中年齢(平均5.8歳)で多い
- オスで多い(70%)
- シャム猫に多い
猫の便秘症の診断(検査)は?
- 直腸検査
・異物
・直腸憩室
・狭窄
・炎症
・腫瘍 など - 神経検査
- 血液検査
・脱水
・低カリウム血症
・高カルシウム血症 など - レントゲン検査
・腫瘤
・骨盤骨折
・脊髄異常 など - エコー検査
- 内視鏡検査(下部消化管)
- CT検査
猫の便秘症の治療は?
- 溜まっている便の除去
・浣腸
・坐剤
・用手による便の除去 - 食餌治療
・高繊維食 など - 緩下剤による治療(いわゆる〝下剤〟)
・膨張性緩下剤
→サイリウム
・軟化性緩下剤
→スルホコハク酸ジオクチルナトリウム
→スルホコハク酸ジオクチルカルシウム
・潤滑性緩下剤
→白色ワセリン
・高張性緩下剤
→ラクツロース
→水酸化マグネシウム
・刺激性緩下剤
→ヒマシ油
→ビサコジル
・結腸運動促進剤
→シサプリド - 外科手術
・薬物治療に反応しない場合
・結腸切除術・骨盤骨切り術 など
色々な種類の下剤がありますが、基本的にはラクツロースを使うことが多いです。
猫の便秘症 治療の見通し(予後)は?
- 軽度から中等度の便秘であれば、通常は内科治療(食餌変更・緩下剤)に反応が見られる
- 治療反応が悪くなった場合には、中〜重度の便秘・巨大結腸症への進行が考えれる。最終的には結腸切除術が必要となる。
- 一般的に結腸切除術後は順調の回復がみられることが多い。
- Small Animal Gastroenterology
- Small Animal Internal Medicine