椎間板ヘルニアは犬で最も多い脊髄の病気です。
〝突然どこかを痛がる〟といった症状では、まず一番に疑う病気の1つです。
目次
犬の椎間板ヘルニアとは?
椎間板ヘルニアは犬で最も多い脊髄の病気です。椎間板物質が脊髄を圧迫することにより、強い痛みや四肢の麻痺(特に後肢)などが現れます。遺伝的な要因があり、若い時期に急に発症しやすいハンセン1型ヘルニアと、加齢に伴って症状がジワジワ強くなるハンセン2型ヘルニアの2つにわけられます。猫での発症は稀です。
犬の椎間板ヘルニアの原因は?
- 椎間板物質の脊髄圧迫
👉遺伝的
👉加齢
👉外傷
👉激しい運動 など
犬の椎間板ヘルニアの発症は?
ハンセン1型ヘルニア
- 遺伝的な要因
👉若い時期に椎間板が硬くなる
👉軟骨異栄養性犬種
・ミニチュア・ダックスフント
・ビーグル
・シー・ズー
・ペキニーズ - 比較的若齢(3〜5歳)での発症が多い
- 急性に発症
ハンセン2型ヘルニア
- 加齢による椎間板物質の変性
- どんな犬種でも発生する
- 中〜高齢での発症が多い
- 症状が徐々に重くなる場合が多い
犬の椎間板ヘルニアの症状は?
胸腰部の椎間板ヘルニアの場合
- 抱っこすると痛がる
- 背中を丸める
- 背中に触れると痛がる
- 後肢の麻痺(前肢だけで移動)
- 排尿・排便のコントロールが出来ない
頸部の椎間板ヘルニアの場合
- 首をすくめて震える
- 首に触れると痛がる(怒る)
- 床に置いたお皿からご飯を食べれない(もしくは食べにくい)
- 首を動かさずに上目遣いになる
- 前後肢の麻痺
- ふらつき
- 歩けない
症状は多岐にわたります。
『なんとなくじっとしている?』といった軽い症状のこともあります。
犬の椎間板ヘルニアの診断は?
- 神経学的検査
👉病変部の推定
👉神経異常(麻痺)があるか判定 - レントゲン検査
👉確定診断は出来ない
👉病変部の推定 - 脊髄造影検査
- CT検査
- MRI検査
脊髄炎や脊髄腫瘍など他の脊髄疾患と鑑別するためには、MRI検査が必要です。
犬の椎間板ヘルニアの治療は?
- 内科治療
👉麻痺症状が軽い場合
👉消炎鎮痛薬(NSAIDs,ステロイド薬)
👉安静(ケージレスト) - 外科治療
👉重度の麻痺の場合
👉内科治療に反応のない場合
👉脊髄圧迫物質の除去
犬の椎間板ヘルニアの治療のみとおしは?
症状が比較的軽度の場合には、内科治療での改善が見込めます。ただし、根本的な治療ではないため、再発の可能性があります。麻痺の症状が重度な場合や、内科治療に反応のない場合には外科手術を検討します。脊髄のダメージが重度の場合には、手術を行っても麻痺などの後遺症が残ったり、症状の改善が全く見られない場合もあります。また、時に進行性脊髄軟化症を併発することがあります。この場合には、短時間で麻痺症状が進行して、1週間程度で死亡してしまう可能性が高いです。現在、進行性脊髄軟化症に対する有効な治療法はありません。
手術のあと症状が改善するのに時間がかかる場合があります。
その場合には、手術後に根気強くリハビリを行うことや、排尿排便の管理が必要となります。
- Small Animal Internal Medhicine 4th
- 『椎間板ヘルニアのインフォームドコンセントのために』SA Medicine Vol.15 No.1 2013