甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
この病気は進行度によって症状が異なります。
猫の甲状腺機能亢進症について詳しく解説していきます
目次
猫の甲状腺機能亢進症とは?
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺からのホルモン(T4、T3)が過剰に分泌される病気です。甲状腺ホルモンの増加により基礎代謝が亢進して、その結果様々な症状を引き起こします。高齢の猫で非常に多い病気で、特に気になる症状がなくても健康診断でみつかることもあります。アメリカでは8歳以上の猫の10〜15%が病気にかかっているとも報告されています。
ヒトの甲状腺機能亢進症の最も一般的な原因は『バセドウ病』です。
これは自己免疫疾患の1つです。
猫の甲状腺機能亢進症の発症は?
- 高齢猫で多い
・ほとんどが8歳以上 - 性差なし
- 好発猫種なし
猫の甲状腺機能亢進症の原因は?
- ほとんどが甲状腺の過形成および腺腫
・適切な治療で長期コントロールできる
・なぜ起きるかは不明
→免疫、感染、栄養、環境、遺伝的因子? - 甲状腺癌は稀
・全体の5%未満
猫の甲状腺機能亢進症の症状は?
- 体重減少
- 多食
- 食欲不振
- 脱毛
- 多飲多尿
- 下痢
- 嘔吐
- 活動亢進
・攻撃性 - 元気消失
- 呼吸促迫
- 虚弱
病気の進行度によって症状が変わってきます。
『何となく元気食欲がない』と受診される場合も多いです。
猫の甲状腺機能亢進症の診断は?
- 身体検査
・削痩
・脱毛
・脱水
・頸部甲状腺の触知
・頻脈(>240回/分) - 血液検査
・甲状腺ホルモン(T4,fT4)の増加
・肝酵素上昇(ALT、ALP、AST) - レントゲン検査
・甲状腺腫大
・心臓拡大(バレンタインハート) - エコー検査
・甲状腺腫大
ホルモン検査以外の一般的な検査では、この病気を検出しにくいです。
8歳以上の猫では健康診断でホルモン測定も一緒に行うことをおすすめします。
また、猫でALP(肝臓の数値)が上がる病気は滅多にありません。
ALPが上がる病気は甲状腺機能亢進症、肝リピドーシス、糖尿病がメインなので、診断では重要なヒントになります。
猫の甲状腺機能亢進症の治療は?
- 内科治療(投薬)
・抗甲状腺薬(チアマゾール)
・全てのタイプの甲状腺機能亢進症の長期治療法
・定期的な甲状腺ホルモンのチェックが必要
・定期的な副作用のチェックが必要
→消化器症状
顆粒減少、血小板減少
・毎日の投薬が必要 - 外科治療(甲状摘出術)
・根治的治療法
・非対称の甲状腺の疾患
・再発、術後合併症(特に低Ca血症)のリスク - 放射線ヨウ素療法
・施設が限られる。一般的でない
・ヒトへの有害性
・異所性甲状腺と甲状腺での適用 - 慢性腎不全の治療
・甲状腺機能亢進症では慢性腎臓病を併発していることが多い
・甲状腺機能亢進症の治療を始めると、隠れていた慢性腎不全の症状が現れることがある
甲状腺機能亢進症の治療のみとおしは?
適切にコントロールできれば予後は良好です。(合併症の管理ができていること、甲状腺癌でないことが前提)
高齢猫での発生が多いため、慢性腎不全や肥大型心筋症などの合併症がある場合には注意が必要です。一般的な甲状腺機能亢進症(過形成・腺腫が原因)では内科治療(メチマゾール)を何年も続けられますが、定期的な副作用チェックが必要です。メチマゾール単独の治療を受けた猫の中央生存期間は2年との報告があります。
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