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猫の肥大型心筋症(HCM)とは?
心筋症とは心臓の筋肉そのものの異常で心臓がうまく機能しなくなる病気の総称です。中でも肥大型心筋症(HCM)は猫で代表的な心臓の病気です。猫の肥大型心筋症は文字どおり心臓の筋肉(心筋)が肥大していく病気です。心筋が肥大した結果、全身へ送り出す血液量が不足してしまいます。 また、血液の流れに異常がきたすため、血栓を作りやすくなります。〝動脈血栓塞栓症〟は命にかかかる重篤な合併症です。
猫の肥大型心筋症(HCM)の発症は?
- 中年齢から発症する場合が多い
- どの年齢でも発症する可能性がある
- オスの発症が多い
- オスの方が若年で発症し、重度に進行する傾向がある
- 遺伝的な要因がある
遺伝的要因のある猫種
- アメリカン・ショートヘアー
- メインクーン
- ペルシャ
- ブリティッシュ・ショートヘアー
- ノルウェイジェン・フォレスト
- ラグドール
- ターキッシュ・バン
- スコティッシュ・フォールド
猫の肥大型心筋症(HCM)の原因は?
- 遺伝的な要因
・常染色体優生遺伝
・心筋収縮蛋白の異常
・心筋ミオシン結合タンパクC遺伝子 - 全身疾患との関連(特定心筋症)
・甲状腺機能亢進症
・腎性高血圧
雑種猫でも多く発生しているので、遺伝的な要因が必ずある訳ではないようです。高齢猫に多い甲状腺機能亢進症や腎不全が肥大型心筋症を引き起こすこともあります。
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猫の肥大型心筋症(HCM)の症状は?
- 初期では無症状
- 食欲低下
- 活動性低下
- 失神
- 呼吸困難
・頻呼吸
・開口呼吸
動脈血栓塞栓症を起こした場合
- 後肢麻痺
- 前肢麻痺
- 痙攣
- 腎不全
- 突然死
猫は心臓の病気で咳をすることがほとんどありません。
ヒトと犬では咳が多いです。
猫の肥大型心筋症(HCM)の診断は?
- 超音波検査
・心臓が拡張した時に心筋の厚さが6mm以上
(厚みを測る場所は、左室自由壁もしくは心室中隔壁) - 特定心筋症の除外(肥大型心筋症に至る基礎疾患がないかチェック)
・甲状腺機能亢進症
・全身性高血圧
・大動脈狭窄症
・成長ホルモン過剰症
・リンパ腫
・脱水
猫の肥大型心筋症(HCM)の治療は?
- 特定心筋症の治療(基礎疾患の治療)
- 薬物治療
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬
・カルシウムチェネル拮抗薬
・交感神経β受容体遮断薬
・利尿薬 など - 血栓塞栓症の予防薬
・ジピリダモール
・アスピリン
・クロピドグレル
・ダルテパリン - 無症状の場合に治療を開始すべきなのか議論されている
薬物治療の大きな目的は以下の3つです。
①寿命を延ばす
②症状を和らげる
③合併症の予防(特に血栓塞栓症の予防)
猫の肥大型心筋症についてはまだまだ分かっていないことが多いです。
病気のどの段階でどんな治療をしていくなど明確な治療指針も定まっていません。
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猫の肥大型心筋症(HCM)の治療の見通しは?
- 寿命も病気の進行状態によって大きく変わってくる
- 特に血栓塞栓症は命に関わる合併症
治療の見通しを伝える時によく『生存期間中央値』という言葉を使います。生存期間中央値とは、ある病気を持ったグループで半分の患者さんが亡くなるまでの期間です。だいたいどれくらい生きれるかの目安になります。
Atkinsらによる生存期間中央値をまとめた論文では
①無症状のグループでは1830日以上
②症状があるグループでは92日
③血栓塞栓症を起こしているグループでは61日
と報告されています。
Rushらによる論文では
①無症状のグループでは1129日
②うっ血性心不全を起こしているグループでは563日
③血栓塞栓症を起こしているグループでは184日
と報告されています。