猫の動脈血栓塞栓症(ATE) まとめ

猫 血栓

血栓症とは血管内に血の固まりが詰まってしまう病気です。
ヒトの病気としてもよく聞く〝脳梗塞〟〝心筋梗塞〟〝エコノミークラス症候群〟なども血栓症の1つです。

ヒトと猫では血栓の作られ方や詰まる部位などに違いがありますが、命に関わる重大な病気という点では一緒です。猫の肥大型心筋症の合併症として有名な〝猫の動脈血栓塞栓症〟について解説していきます。

目次

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)とは?

猫において動脈血栓塞栓症の原因として最も多いのが心筋症です。特に猫で多い肥大型心筋症の合併症として注意が必要です。肥大型心筋症によって血流の乱れ(乱流)が発生して、心臓内で血栓が作られます。そして、この血栓が全身への循環に乗り、各所の血管で詰まることで症状を引き起こします。血栓が詰まりやすい部位は動脈の三分岐部(鞍状血栓)が最も多い場所ですが、血栓の大きさや流路によっては、腸骨動脈、大腿動脈、腎動脈、上腕動脈などの血管に詰まります。いずれにしても、命に関わる重大な病気です。

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の発症は?

  • オスで血栓塞栓症を起こす危険性が高い。
    (オスの方が肥大型心筋症の罹患率が高いから?)

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の原因は?

  • 一般的な病因は心筋症(肥大型心筋症
  • 腫瘍
  • 全身性炎症性疾患
  • 甲状腺機能亢進症
    (肥大型心筋症を引き起こすリスクとは別に、血栓形成のリスクとなる)
  • 原因不明の血栓

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の症状は?

  • 元気消失
  • 食欲不振
  • 低体温
  • 激しい痛み
    👉頻呼吸、開口呼吸
  • 四肢麻痺(特に後肢)
  • 肢端の冷感、蒼白

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の診断は?

  • 身体検査
    ・急性肢麻痺
    ・患肢の疼痛・冷感
    ・股動脈拍動がない
    ・呼吸促迫、呼吸困難
  • エコー検査
  • レントゲン検査
  • 血液検査
  • CT検査
  • MRI検査

上記の検査を組み合わせて、血栓塞栓症を引き起こす病気を鑑別していきます。

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の治療は?

動脈血栓塞栓症の治療は注射薬や飲み薬などの内科治療が中心となります。
根治を目指す治療ではなく、
①進行を緩やかにする
②症状を和らげる
③再発を防ぐ

などが大きな目的となります。

治療薬
  • 抗凝固薬
    ・未分画ヘパリン
    ・低分子ヘパリン
    ・ワルファリン
  • 血栓溶解薬
    ・ストレプトキナーゼ
    ・ウロキナーゼ
    ・組織プラスミノーゲン・アクチベーター
  • 血小板凝集阻害薬
    ・アスピリン
    ・オザクレル

猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の治療の見通しは?

  • 通常は猫の動脈血栓塞栓症の予後は悪いとされている。
  • はじめて血栓塞栓を起こした猫のうち、わずか3分の1しか生き残らなかったという報告もある。
  • ただし、近年の報告では生存率が上がってきている。
  • 肢の麻痺が改善してくる場合もある。
  • Small Animal Internal Medicine 4th
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