病気

犬の皮膚肥満細胞腫 内科治療 

犬 肥満細胞腫

犬の皮膚肥満細胞腫 内科治療を考える場合

犬の皮膚肥満細胞腫において、まず考える治療は手術です。

ただし、以下の場合には内科的治療を考えていきます。
内科治療では主に抗がん剤(分子標的薬も含む)がメインとなります。

  1. 麻酔のリスクや様々な条件で手術を断念する場合
  2. 内科治療で腫瘍を小さくしてから手術をする場合
    👉マージンが確保できない場合
  3. 手術後に内科治療を行う場合
    👉手術で腫瘍の取り残しがあ場合
    👉病理検査で組織学的グレードが高いと判定された場合
    👉転移が確認された場合

抗がん剤治療について

抗がん剤治療を考える基準

  1. グレード3の肥満細胞腫
  2. リンパ節転移がある肥満細胞腫(ステージⅡ以上)
  3. 手術・放射線治療が適応にならないほど進行した肥満細胞腫
  4. 多発性(3箇所以上)に発生したグレード2以上の肥満細胞腫
    (*パグは除きます)
  5. 手術のマージンが十分に確保できない場合

抗がん剤の種類

  • ロムスチン(CCNU)
  • ビンブラスチン
  • ヒドロキシウレア
  • プレドニゾロン
分子標的薬
  • イマチニブ
  • マシチニブ
  • トラセニブ

分子標的薬とはがん細胞の特定の部分を狙って攻撃する薬です。
正常な細胞には攻撃をしないので、従来の抗がん剤と比べて副作用が少ないです。

内科治療単独の場合(手術をしない)

  • 抗がん剤単独での完治や長期間の寛解状態を維持することは難しいです。
  • 症状を和らげたり、生活の質を維持するこが出来ます。
  • 一定の割合で腫瘍は小さくなります。
  • 短期間のうちに、また大きくなることがほとんどです。

『寛解』とは〝症状が落ち着いて安定した状態〟をいいます。
完治とは違いますが、見た目上治っているようにみえる状態です。

手術前の内科治療(ネオアジュバント療法)

  • マージンの確保が難しい場合に、腫瘍を小さくしてから手術をする方法です。
  • 病理的に完全切除できていても、局所再発した例もあります。
    腫瘍が小さくなったとしても元の大きさのマージンが必要との考え方もあります。
  • 目に見えた反応があるので、どの抗がん剤(分子標的薬も含む)が効果があるのか判別できます。

手術後の内科治療

  • 手術前に転移がある場合でも、抗がん剤治療前に原発腫瘍を手術で切除すると、明らかに寿命が伸びるとの報告があります。
  • 遺伝子変異の有無を検査することで、分子標的薬の効果を予測することができます。
    ただし、遺伝子変異がない場合でも分子標的薬の治療効果があることがあります。
  1. Withrow & Macewen’s Small Animal Clinical Oncology 5th
  2. 肥満細胞腫の病態と診断アプローチ Conpanion Animal Practice,No.327
  3. Small Animal Internal Medicine 4th