犬の肥満細胞腫とは?|2番目に発生率が高い腫瘍の治療法について獣医師が解説

床に伏せるフレンチブルドッグ

「皮膚にしこりができている」
「急にしこりが赤くなったり大きくなったりする」
「肥満細胞腫って悪性腫瘍なの?」
愛犬の皮膚にしこりを見つけると、不安になりますよね。
犬の肥満細胞腫は、皮膚に発生することが多い悪性腫瘍です。
犬では比較的発生率が高く、皮膚腫瘍の中でも特に注意が必要な腫瘍として知られています。
一方で、肥満細胞腫は悪性度や進行度によって治療方法や予後が大きく異なる腫瘍でもあります。
早期発見・早期治療によって良好な経過をたどるケースも少なくありません。

この記事では、犬の肥満細胞腫について、症状・診断・治療方法・みとおしまでわかりやすく解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の皮膚の変化に早く気づけるようにしていきましょう。

目次

肥満細胞腫とは?

肥満細胞腫とは、肥満細胞という免疫に関わる細胞が腫瘍化した病気です。
犬では皮膚に発生することが多く、皮膚腫瘍の7〜21%を占める非常に発生率の高い腫瘍として知られています。
また、犬の悪性腫瘍全体の中でも2番目に多い腫瘍といわれています。
肥満細胞腫は皮膚にできることが一般的です。
しかし、まれに脾臓や消化管など皮膚以外の場所に発生することもあります。

腫瘍の性質はさまざまで、

  • 比較的おとなしいタイプ
  • 急速に進行するタイプ

など、悪性度によって大きく異なります。

肥満細胞腫の発症は?

犬の肥満細胞腫は中高齢で発生しやすい腫瘍です。
また、以下の犬種では発症リスクが高いことが知られています。

  • パグ
  • ボクサー
  • ボストンテリア
  • イングリッシュブルドッグ
  • シュナウザー
  • シャー・ペイ
  • ラブラドール・レトリーバー
  • ゴールデン・レトリーバー

ただし、どの犬種でも発生する可能性がある点には注意が必要です。

肥満細胞腫の症状は?

肥満細胞腫は、皮膚のしこりとして気づかれることが多い腫瘍です。
肥満細胞腫でできるしこりには以下のような特徴がみられることがあります。

  • 急に大きくなる
  • 赤く腫れる
  • 触るとサイズが変化する

肥満細胞腫の細胞からは、ヒスタミンなどの炎症物質が放出されることがあります。
そのため、しこり周囲の赤みや腫れが強く出る場合があります。

また、肥満細胞腫が進行すると以下のような全身症状がみられることもあります。

  • 嘔吐
  • 下痢
  • 食欲低下

これは、肥満細胞腫から出る炎症物質によって胃腸に影響が出るためです。

頭頂部皮膚の肥満細胞腫

頭頂部皮膚の肥満細胞腫の画像

フレンチ・ブルドック 膝の肥満細胞腫

フレンチブルドッグの膝の皮膚肥満細胞腫

肥満細胞腫の診断は?

肥満細胞腫では、しこりの性質や転移の有無を確認するためにさまざまな検査が行われます。

細胞診

細胞診は、細い針をしこりに刺して細胞を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
肥満細胞腫は細胞診で特徴的な所見がみられることが多いです。
そのため、肥満細胞腫を診断するためには重要な検査になります。

リンパ節の細胞診

肥満細胞腫はリンパ節へ転移することがあります。
そのため、近くのリンパ節に針を刺して転移の有無を確認する検査が必要です。

血液検査

血液検査では、全身状態や内臓への影響が確認できます。
犬が麻酔や治療に耐えられる状態かを評価するためにも重要です。

レントゲン検査・超音波検査

画像検査では、肺や腹部臓器への転移がないかが確認できます。
転移があると治療期間や予後も変わってくるため、画像検査は重要です。

病理検査

切除した腫瘍を詳しく調べることで、

  • 診断の確定
  • 悪性度の評価
  • 切除が十分かどうか

がわかります。
肥満細胞腫では、この悪性度評価が今後の治療方針に大きく関わります。

遺伝子検査

一部の肥満細胞腫では、遺伝子変異が関与していることがあります。
遺伝子検査によって、分子標的薬が有効かどうかを判断される場合があります。

細胞診

肥満細胞腫の細胞診
皮膚肥満細胞腫の細胞診

肥満細胞腫の治療は?

肥満細胞腫の治療は、腫瘍の悪性度や広がり方によって変わります。

外科手術

肥満細胞腫では、外科手術が基本的な治療になります。
周囲の正常組織も含めて広めに切除することで、再発リスクを下げることが重要です。

放射線治療

手術で腫瘍が完全に取り切れなかった場合などには、放射線治療を検討することがあります。

化学療法(抗がん剤)

肺などへの転移がある場合や腫瘍の悪性度が高い場合には、抗がん剤治療を行うことがあります。
代表的な薬剤は以下の通りです。

  • ビンブラスチン
  • ロムスチン

分子標的薬

腫瘍に遺伝子変異が確認された場合には、分子標的薬を使用することがあります。
代表的な薬剤には、

  • イマチニブ
  • トセラニブ

などがあります。

症状に対する治療

肥満細胞腫では、ヒスタミンの影響によって胃腸症状が出ることがあります。
そのため、

  • 吐き気止め
  • 胃薬
  • 下痢止め

などを併用しながら体調管理を行います。

肥満細胞腫の内科治療についてはこちらもご覧ください。

肥満細胞腫の治療のみとおしは?

肥満細胞腫の予後は、

  • 悪性度
  • 転移の有無
  • 切除状況

によって大きく変わります。
初期の腫瘍を完全切除できた場合には、長期的に良好な経過をたどることも多いです。

一方で、

  • 取り切れなかった場合
  • 高悪性度の場合
  • 転移がある場合

には、再発や進行のリスクが高くなります。
そのため、病理検査による評価や定期的な経過観察が重要になります。

犬の肥満細胞腫の悪性度についてはこちらの記事もご覧ください。

まとめ

犬の肥満細胞腫は、犬で発生率の高い悪性腫瘍のひとつです。
見た目だけでは良性のしこりとの区別が難しいため、「小さいから大丈夫」と自己判断しないことが重要です。
早期発見・早期治療によって良好な経過をたどるケースも多いため、皮膚のしこりに気づいた場合には早めに動物病院へ相談しましょう。

当院では、犬の肥満細胞腫に対する診断・外科治療・内科治療まで幅広く対応しています。

愛犬の皮膚のできものが気になる場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

  • Withrow & Macewen’s Small Animal Clinical Oncology 5th

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