高齢犬や重い病気を抱えた犬が「自力で食べられなくなる」ことは少なくありません。
しかし、食事が取れなくなると体力や免疫力が急速に低下し、生活の質(QOL)も大きく下がってしまいます。
そんな場合に有効なのが鼻カテーテル(経鼻カテーテル)による給餌です。
「鼻からチューブをいれるなんて可哀想」と抵抗を感じてしまうかもしれません。
しかし、鼻カテーテルを正しく使用すれば愛犬への負担少なく栄養ケアを行うことが出来ます。
この記事では犬の鼻カテーテルとはどんな場合に使われるのか、実際の給餌方法やご自宅管理のポイントについて詳しく解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の鼻カテーテルの管理にお役立てください。


鼻カテーテルとは?
鼻カテーテルとは、犬の鼻の穴から細いチューブを入れ食道を通して胃まで到達させる給餌方法です。
正式には「経鼻食道チューブ」「経鼻胃チューブ」などと呼ばれます。
犬が自力で十分な食事を摂れない場合に、
- 栄養補給
- 水分補給
- 投薬補助
を目的として使用されます。
鼻カテーテルはどんな時に使用される?
犬の鼻カテーテルは、食欲不振が続く場合や口から食べられない場合の給餌の補助として使用されます。
- 腫瘍
- 腎不全
- 肝疾患
- 膵炎
- 外科手術実施後
といったような状態で食欲が低下した場合、鼻カテーテルから給餌をすることによって栄養の補給をすることが可能です。
また以下のような場合で、口から食事が取れない場合にも鼻カテーテルは適応となります。
- 口腔内腫瘍
- 顎の骨折
- 舌の麻痺
- 重度の口内炎
他には口からの投薬が困難な場合にも鼻カテーテルは有効です。
鼻カテーテルを使用することによって、投薬によるストレスを緩和してあげることが可能です。
また鼻カテーテルは緩和ケア・終末期ケアとしての役割があります。
緩和ケアとは、病気そのものを治療するのではなく、
- 痛み・不快感を最小限にする
- 免疫・体重・筋力を維持する
- ストレスを減らし、穏やかな環境で過ごす
といった目的で行われます。
鼻カテーテルは、無理に食べさせるのではなく「最低限必要な栄養と水分を穏やかに補うことにより愛犬のQOL(生活の質)を保ち、穏やかに過ごせるようにサポートすることが可能です。
鼻カテーテルのメリット
犬の鼻カテーテルのメリットには以下のようなものがあります。
- 手術は不要で鎮静なしで設置できることが多い
- 身体への負担が少ない
- 設置後すぐに栄養補給が可能
- 不要になればすぐ抜去できる
食道チューブや胃ろうチューブの設置には全身麻酔下での外科手術が必要です。
しかし鼻カテーテルに使用するチューブは比較的細いため、無麻酔もしくは軽い鎮静だけで装着が可能です。
鼻カテーテルは身体への負担も少なく、高齢犬や持病を持つ犬では大きなメリットとなります。
設置後からすぐに給餌を行うこともでき、また不要になったらカテーテルを鼻から引き抜くだけで抜去が可能です。
鼻カテーテルのデメリット・注意点
多くの利点がある鼻カテーテルですが、同様にデメリットもあるため注意が必要です。
デメリットを理解した上で安全に使用することが重要です。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
チューブが細いため詰まりやすい
鼻カテーテルは細いチューブのため、ドロドロの流動食しか使えません。
非常に詰まりやすいため、食事を通したあとは毎回しっかり水で洗浄する必要があります。
また一度に多くの量をいれることは出来ないので、少しずつ頻回に給餌をしてあげることが必要です。
犬が嫌がることがある
犬に鼻カテーテルを取り付けたあと、最初は違和感を覚えてしまうこともあるかもしれません。
前足で取ろうとしたり、顔を擦りつけるなどの行動によって自力で鼻カテーテルを外してしまう場合もあるため、エリザベスカラーが必要になる場合もあります。
長期使用には向かない
鼻カテーテルは鼻への刺激や炎症が起こるため、1〜2週間に1度、反対の鼻へ入れ直す必要があります。
長期化する場合は別の方法(食道チューブや胃ろうチューブ)を検討することがあります。


鼻カテーテルでの実際の給餌方法
鼻カテーテルでの給餌方法のポイントは以下のとおりです。
- フードは体温程度に温める
- 少量ずつゆっくり時間をかけて投与する
- 投与前後はぬるま湯でチューブ内をフラッシュ(洗浄)する
- 1日量を複数回に分ける
給餌する際には無理に押さえつけたりせず、犬が安心できる環境を作りましょう。
チューブの位置を確認し、最初は少量の水を与えてむせないかを確認する必要があります。
使用する食事は、液体タイプのものやなめらかで詰まりにくいものです。
誤嚥や嘔吐を防ぐために少量をゆっくりとカテーテルから注入し、必要に応じて食事量や水分量の調整を行います。



鼻カテーテルでの給餌を行ったあとは、吐き気などがでてこないかよく様子を観察するようにしましょう。
自宅で観察すべき症状
チューブが入っていても、多くの子は普段通りに生活できます。
ただしご自宅で以下の症状が見られた際はすぐ病院へ連絡してください。
- 呼吸が苦しそう
- 咳き込む
- チューブが抜けた
- 嘔吐を繰り返す
- 鼻から大量の液が出る
- ぐったりしている
- 発熱している
このような症状が起きた場合には、誤嚥や全身状態の悪化などの可能性があります。



緊急を要する場合もあるため、すぐに受診をするようにしましょう。


まとめ
鼻カテーテル給餌は、犬の緩和ケアにおいて命を支える手段であると同時に、穏やかな時間を守るためのサポートでもあります。
終末期では、食べること自体が苦痛になったり、消化能力が落ちるため無理な栄養補給が負担になる場合もあります。
鼻カテーテルは
- 脱水を和らげる
- 空腹感を減らす
- 薬を投与しやすくする
という役割があり、愛犬が穏やかに過ごせるようにする手段のひとつです。
当院では緩和治療に力をいれています。



愛犬の食事管理に悩んでいる場合や、鼻カテーテルのご自宅での管理の仕方のご相談までいつでもご来院ください。










