看病・介護における栄養管理の方法について解説していきます。
必要な栄養量は?
看病や介護を必要する子は、まずは安静時エネルギー要求量(RER)を満たすことを目標とし、体重の増減を見ながら微調整していくことが望ましいです。計算方法は以下の2通りです。①の計算式はより正確な計算方法ですが、√マークの付いた電卓(関数電卓)が必要です。②の方法は簡単に計算できる方法で、2〜45kgの子で適用されます。
1日あたりの栄養量が計算できます。
1日2食の場合には、半分ずつ満たせるように食事を考えます。
普段どおりの生活ができている子には、DER(1日のエネルギー要求量)が栄養量の目安です。DERはRERに活動係数をかけた数値です。
RER、DERは体重に対する目安の数値でしかありません。同じ体重の子でも代謝エネルギー量に差があるので、体重の増減をみながら微調整していきます。
①RER = 70×[体重(kg)]0.75kcal / day
②RER = [30×体重(kg)]+ 70kcal / day
以下のとおり順番に電卓に打ち込みます。
・『 体重(kg) 』
・『 × 』
・『 体重(kg)』
・『 × 』
・『 体重(kg)』
・『 = 』
・『 √ 』
・『 √ 』
・『 × 』
・『 70 』
体重(kg) | RER(kcal/day) |
---|---|
1.0 | 70 |
1.25 | 83 |
1.5 | 95 |
1.75 | 107 |
2.0 | 118 |
2.5 | 139 |
3.0 | 160 |
3.5 | 179 |
4.0 | 198 |
4.5 | 216 |
体重(kg) | RER(kcal/day) |
---|---|
5.0 | 216 |
5.5 | 251 |
6.0 | 268 |
6.5 | 285 |
7.0 | 301 |
7.5 | 317 |
8.0 | 332 |
8.5 | 348 |
9.0 | 364 |
9.5 | 379 |
体重(kg) | RER(kcal/day) |
---|---|
10.0 | 394 |
11.0 | 423 |
12.0 | 423 |
13.0 | 479 |
14.0 | 506 |
15.0 | 533 |
16.0 | 560 |
17.0 | 586 |
18.0 | 611 |
19.0 | 637 |
具体的な給餌方法
- 経口給餌
- 経腸チューブ
・経鼻食道チューブ
・食道瘻チューブ
・胃瘻チューブ(PEG)
・空腸瘻チューブ
経口給餌
最良の給餌方法です。カテーテルシリンジやシリコンスプーンなどを使って直接口から食事を与えます。嗜好性の高い食事を選んだり、人肌程度に温めることで食欲を促してあげます。
経鼻食道チューブ
鼻腔から栄養カテーテルを通す方法です。鼻腔内疾患、喉頭疾患、食道疾患の場合には適用されません。
細いチューブ(カテーテル)しか通すことができないため、投薬は困難です。
- 設置が容易
- 全身麻酔が不要
- 安価
- 長期間の使用ができない
- 液体食しか投与できない
- チューブの反転により誤嚥を引き起こすことがある。給餌前に必ずチューブが抜けていないかのチェックが必要
- 不快感がある
- 基本的にエリザベスカラーが必要
食道瘻チューブ
頸部食道からチューブを通す方法です。やや太めのチューブを設置できるのでペースト状のフードでも給餌できます。
- 数ヶ月の使用可能
- 設置に特殊器具を必要としない
- いつでも外せる
- 太めのチューブであればペースト食も投与できる
- 不快感が少ない
- 投薬も可能
- 全員麻酔が必要
- 頸部皮膚や皮下の炎症を起こすことがある
胃瘻チューブ(PEG)
胃に直接チューブを通す方法です。太いチューブを設置できるのでやや硬めのペースト食も給餌できます。
- 半年以上の使用可能
- やや固めの流動食も投与できる
- 不快感が少ない
- チューブを収納するポケット付の洋服が市販されている
- 設置費用が高い
- 全身麻酔が必要
- 内視鏡設備が必要
- 腹膜炎、瘻孔の感染、皮膚障害などの合併症
空腸瘻チューブ
見た目は胃瘻チューブと変わりありませんが、チューブの先を胃・十二指腸の先の空腸まで伸ばしています。胃での消化を介さないので液状食のみの給餌になります。
- 上部消化管(胃・十二指腸)の手術を受けた場合の栄養管理に有効
- 上部消化管(胃・十二指腸)に疾患のある場合の栄養管理に有効
- 少量頻回の投与が必要
- 設置費用が高い
- 外科的な設置が必要
- 腹膜炎、瘻孔の感染、皮膚障害などの合併症
実際の食事内容
シリンジでの経口給餌やチューブ給餌で使いやすい食事の1例です。
- Hills 回復期ケア a/d缶
- ピュリナ CN缶
- 森乳サンワールド チューブ・ダイエット(カケシア)
- ロイヤルカナン リキット食シリーズ
- dbf カロリーエース
給餌方法
病気によっても給餌の方法が異なります。食事内容、食事の量、食事頻度はかかりつけの先生の指示に従ってください。
- 経鼻チューブではフードを流す前にシリンジで陰圧を確認する。シリンジを引いて空気が常に返ってこないのが正常。空気が常に返ってくる場合にはシリンジが気管に入ってしまったり、反転して口腔内に抜けている場合があるので給餌を中止する。
- その後、ぬるま湯をゆっくり流して咳込まないかチェックする。咳込む場合にも誤嚥させる可能性があるので給餌を中止する。
- フードは人肌程度に温めておく
- 吐きそうな様子がないか確認しながらゆっくりと給餌する
- フードを流し終えたら、ぬるま湯でチューブ内のフードを押し流す
『早く必要栄養量を満たさないと…』と焦ってしまいがちですが、食事量は1週間くらいかけてゆっくりと必要量に近づけていきます。突然の給餌はリフィーディング症候群や膵炎を引き起こすことがあるからです。