猫の喘息について|ご家庭でできる緩和ケアを獣医師が解説
「猫の喘息は何が原因なの?」
「なかなか良くならないけどどうしたらいい?」
「呼吸が苦しそうだけど家でできることはないかな?」
などと思われている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
猫の喘息は人の喘息と同じように、咳や呼吸困難を引き起こす慢性的な気管支の病気です。
今回は猫の喘息について解説し、ご家庭でできる管理のポイントについて詳しく紹介します。

ぜひ最後までお読みいただき、ご家庭での愛猫のサポートにお役立てください。
猫の喘息とは
猫の喘息とは、何らかの原因で気管支に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなる病気です。
慢性的な咳や呼吸困難を引き起こし、重度の場合には命に関わる危険性もあります。
喘息は2〜8歳ごろの猫に多い傾向です。
発症年齢が若いほど重症化しやすいと言われています。
代表的な原因は以下のようなものです。
- アレルギー
- 感染症
- 環境の変化
アレルギーや感染症は呼吸器の炎症を引き起こします。
アレルギーの原因は様々ですが、特に多いものは以下です。
- ハウスダスト(ほこり、ダニなど)
- 花粉
- 食べ物
- たばこの煙
感染症はウイルスや細菌によって起こります。
喘息に繋がりやすい代表的な感染症はヘルペスウイルスやカリシウイルスによるものです。
いわゆる猫風邪のことですね。
一見ただの風邪症状に思えますが、長引くと喘息に繋がるため注意が必要となります。
環境の変化も喘息につながる可能性があります。
環境の変化の例は以下のようなものです。
- 引っ越しした
- 新しい家族やペットが増えた
- 飼い主の留守が続いた
上記のような例は猫にストレスを与えることがあります。
猫が強いストレスを感じると喘息の発症の一因となったり、喘息の悪化につながることがあります。



猫の体調が良かったのに急に喘息になった場合や悪化した場合には環境の変化も考慮しましょう。
猫の喘息の症状
猫の喘息は人間の喘息に似ています。
人間の喘息の患者さんにも咳をしたり苦しそうに呼吸をされている方がいますよね。
猫の喘息でも同じように咳をしたり苦しそうな呼吸が見られます。
喘息の咳は通常の風邪の咳とは異なり、コホコホという乾いた音が特徴です。
喘息が軽度な場合には猫が動いた時にだけ症状が出ることも多いです。
しかし重症化すると体内の酸素が足りなくなるほど状態が悪化する場合があり、
- 口を開けた呼吸
- チアノーゼ(粘膜が青紫色になる)
という症状が出ます。
上記のような症状は非常に深刻な状態で命に関わる危険があります。
猫が危険な状態に陥る前に早めに治療を開始しましょう。



猫の呼吸が苦しそうな場合にはすぐに動物病院を受診してください。
猫の喘息の治療
猫の喘息ではステロイドによる治療が必要となることが多いです。
ステロイドは気管支の炎症を抑え、喘息の症状を和らげることができます。
しかしステロイドは副作用がとても強いというのが有名です。
喘息の猫ではステロイドを長期的に使用するため、副作用が出ないか心配ですよね。
現在ではステロイドの副作用を軽減するために、猫への吸入療法も行われています。
吸入療法
吸入療法は霧状にした薬を吸い込むことで、ステロイドを直接呼吸器に届けることができます。
内服で投与されるよりも薬が局所的に作用するため、副作用が最小限になるのが特徴ですね。
猫に薬を吸入させるには、吸入器を猫の顔に当てる必要があります。
「猫に薬を吸わせるのは難しそう…」
と思われる方もいらっしゃいますが、正しい方法がわかれば意外とすぐに慣れてしまうものです。
吸入療法を検討されている方は動物病院にご相談いただくのがおすすめです。
猫の喘息の緩和ケア
猫の喘息では緩和ケアを行うことで症状の悪化を防いだり、猫の生活をより快適にすることができます。
ご家庭でもできる緩和ケアは、
- アレルゲンの除去
- 室内環境の整備
- 食事療法
- 酸素室の導入
などがあります。
それぞれの方法について解説します。
アレルゲンの除去
喘息の原因としてアレルギーが疑われる場合には、アレルゲンの除去を行います。
アレルゲン除去食の利用や、生活環境からアレルゲンを取り除く工夫をするのも効果的です。
アレルゲンがハウスダストや花粉である場合には空気清浄機を使用するのも良いですね。
室内環境の整備
喘息の発作は高温多湿の環境で起こりやすくなります。
エアコンや加湿器を用いて、適切な室温と湿度に保ちましょう。
室温は21〜28度、湿度50%前後を目安にしてください。
猫の呼吸が苦しそうな場合には、楽な姿勢を探してあげるのも良いですね。
クッションやタオルを用いて猫の頭と胸の高さを調節し、呼吸が落ち着く姿勢にしてあげましょう。
食事療法
肥満は喘息を悪化させるため、適切な体重を維持することが重要です。
食事の量や種類には注意しましょう。
喘息の状態が落ち着いている時には、軽い運動を取り入れるのもおすすめです。
酸素室の導入
猫の呼吸状態が非常に悪い場合には、酸素室の使用が有効です。
酸素室は小さな箱の形をしており、中は高濃度の酸素で満たされた状態です。
猫は酸素室に入ることで楽に酸素を取り込めるようになります。
動物の家庭用酸素室はいくつかの企業でレンタルや販売されています。
酸素室は一度導入すると休止するタイミングが難しいこともあるため、獣医師と相談しながら使用しましょう。
まとめ



いかがでしたでしょうか?
猫の喘息は生涯付き合っていく病気です。
愛猫が少しでも快適に過ごせるように、今回ご紹介した緩和ケアをぜひ取り入れてみてください。
当院では喘息や呼吸状態の悪い猫の往診も対応しております。
猫の喘息についてご相談がある場合や通院が難しい場合には、お気軽に当院までご連絡ください。

