猫の自壊した乳腺腫瘍について|自宅でできる緩和ケアを獣医師が解説
「猫の乳腺腫瘍がジュクジュクしていて心配」
「とても痛そうだしにおいもしてかわいそう」
「何か猫にしてあげられることはないかな」
以上のように思われている飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
乳腺腫瘍は猫の乳腺にできる腫瘍で、大きくなった結果自壊という現象を引き起こすことがあります。
今回は猫の乳腺腫瘍の自壊について解説し、ご家庭でできる緩和ケアについて詳しく紹介します。

ぜひ最後までお読みいただき、ご家庭での愛猫のサポートにお役立てください。
猫の乳腺腫瘍とは
猫の乳腺腫瘍とは猫の胸〜下腹部にある乳腺にできる腫瘍のことです。
乳腺腫瘍には良性と悪性(乳腺癌)がありますが、猫の場合約8〜9割が悪性だと言われています。
診断時に良性であっても、のちに悪性に転化することもあるため注意が必要です。
乳腺腫瘍の原因として、ホルモンバランスの乱れが大きく関わることがわかっています。
避妊去勢手術を受けていない猫では乳腺腫瘍の発生率が高く、特に10歳以降に発生することが多いです。
乳腺腫瘍と言うと雌の病気というイメージがあるかもしれませんが、まれに雄の猫でも発生します。
猫の乳腺腫瘍の自壊
自壊とは腫瘍の内部が露出し、壊死や溶解を起こした状態のことです。
乳腺腫瘍が非常に大きくなった際に皮膚が裂けて自壊が起こります。
自壊した乳腺腫瘍の症状は以下のようなものです。
- じゅくじゅくとした見た目
- 膿や滲出液の発生
- 出血
- 腐敗臭
自壊が起きると膿や滲出液によって患部は常にじゅくじゅくとしており、腐敗臭がします。
腐敗臭を抑えるためにも患部を清潔に保つことが重要です。
こまめなケアが必要となりますが、頻繁な通院は猫の負担になってしまいます。
ご家庭でのケアや往診を活用していきましょう。
猫の自壊した乳腺腫瘍のケア
乳腺腫瘍が自壊した場合の緩和ケアは以下のようなものがあります。
- 自壊した腫瘍の衛生管理
- 痛みの管理
- 環境整備
各ケアについて詳しく解説します。
自壊した腫瘍の衛生管理
自壊した乳腺腫瘍は腫瘍の内部が露出しており、感染を起こしやすい状態になります。
排膿や出血から不衛生になりやすいため、患部を清潔に保つ処置が必要です。
自壊した乳腺腫瘍の処置は以下が挙げられます。
- 患部の洗浄
- 塗り薬の塗布
- ガーゼとテープによる患部の保護
各処置のポイントを紹介します。
患部の洗浄
洗浄にはぬるめの生理食塩水を用います。
生理食塩水は動物病院で処方できますが、ドラッグストアでも購入可能です。
患部をこすることはせず、水流のみでできる限りの汚れを落としていきます。
塗り薬の塗布
塗り薬は抗生剤や患部の保護成分を含むものがあります。
患部の状態に応じて動物病院で処方されたものを使用しましょう。
清潔な綿棒や手袋を用いて、薬を患部に乗せるイメージで行います。
ガーゼとテープによる患部の保護
自壊した乳腺腫瘍を保護するために、ガーゼとテープを用いて患部を覆います。



患部に当てるガーゼは人間用ナプキンや母乳パットを代用しても良いですね。
患部に当てるガーゼは人間用ナプキンや母乳パットを代用しても良いですね。
ナプキンや母乳パットは分厚いため、ガーゼよりも血液や滲出液の吸収性に優れます。
ナプキンや母乳パットの注意点は、自壊した患部に貼り付く可能性がある点です。
患部に接する部分に穴を開けたビニールやラップを挟んであげましょう。
乳腺腫瘍が進行している猫では、動くのが辛くトイレへ行くのが困難になるケースも多いです。
トイレへ行けず寝たきりの場合、排泄物で患部が汚染されてしまいます。
汚染を防ぐため、猫にオムツを履かせたり、介護服を使用して患部を保護するのもおすすめです。
痛みの管理
乳腺腫瘍自体に痛みはありませんが、自壊することで強い痛みを生じます。
猫の状態に応じて痛み止めを使用します。
痛み止めの種類は以下のようなものです。
- 抗炎症薬
- 鎮痛薬
- 医療用の麻薬
一般的によく使われる抗炎症薬や鎮痛薬には、内服薬と注射薬があります。
特に痛みが激しい場合には医療用の麻薬を使用することもあるでしょう。
医療用の麻薬は注射薬と貼るタイプの薬がありますが、ご家庭向けの処方には制限があります。
当院にはさまざまな種類の痛み止めがあり、愛猫に応じた疼痛管理が可能です。
内服が難しい場合や痛みが激しくなっている際には往診もご活用ください。
環境整備
自壊した乳腺腫瘍の悪化を防ぐには、環境整備も重要です。
猫が横になった際に腫瘍が圧迫されたり擦れたりすると、自壊部分を傷つける恐れがあります。



猫のベッドや普段の居場所は、毛布や厚手のバスタオルでふかふかにしてあげると良いですね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
自壊した乳腺腫瘍はショッキングな見た目のため、猫だけでなく飼い主様にとっても大きな精神的負担となります。
愛猫と過ごす時間をできるだけ快適で穏やかなものにしたいですよね。
当院では猫の状態に応じた緩和ケアも積極的に行っております。
乳腺腫瘍の自壊のことや往診のことでご相談がありましたら、お気軽に当院までご連絡ください。

