猫は高齢になると、関節炎を発症することが非常に多いということを知っていますか?
人間も高齢になると、足や腰が痛くなりますよね。
実は猫も同じで、高齢猫の90%以上で関節炎を患っていると言われています。
「うちの猫は高齢だけど、元気で痛みがあるように見えない」という方も多いのではないでしょうか。
猫は痛みを隠す動物です。

元気そうに見えても、実は痛みを我慢しているかもしれません。
飼っている猫が関節炎の診断を受けた方だけでなく、猫を飼っている方はぜひこの記事を最後まで読んでいただき、愛猫の健康管理に役立てましょう。
猫の関節炎の特徴とは
関節炎とは、体を構成する骨と骨の連結部分に起こる炎症を指しますが、猫に多い関節炎にはいくつかの原因があります。
その中でも、もっとも多いのが変形性関節症です。
変形性関節症は、関節が破壊されいびつな形に増生してしまう疾患です。
変形性関節症の進行は不可逆的で、完治することは見込めません。
変形性関節症の原因は、
- 加齢
- 肥満
- 外傷
- 遺伝
などが挙げられます。



遺伝的に変形性関節症を起こしやすい猫種として、スコティッシュフォールドが有名ですね。
また猫では
- 手首の手根関節
- 肘関節
- 膝関節
が好発部位です。
猫は関節が痛いとどうなる?
動物で関節炎の症状といえば、「足を引きずる」「足をあげてけんけんする」など歩き方に変化が出ることが多いと思いますよね。
しかし、猫は警戒心の強い動物なので多少の痛みでは、歩き方に変化は出ません。
動物病院を受診される関節炎の猫の症状は、
- 高いところに登らなくなった
- 爪研ぎやグルーミングの頻度が減った
- 体を触ると怒るようになった
- トイレの粗相が増えた
- ご飯を食べる量が減った
など、高齢の猫では特に症状というより、加齢による活動量の低下と考えてしまいやすいようなものが多いです。
これらの症状でさえも、関節炎の猫の40%しか症状を出さないと言われています。
また、痛みが重度になり猫の歩き方に変化が出ても、警戒心の強い猫は動物病院では痛みを我慢してしまうことがよくあります。
もしご家庭で、猫の歩き方や階段の上り下りの仕方などの変化に気がついた場合は、その様子を動画などに収めていただくことで診断の精度を上げることができます。
関節炎の猫にしてあげられること
愛猫に関節炎があるとわかったとき、ご家族としてはなんとか痛みやストレスから解放してあげたいと思いますよね。
猫の関節炎は劇的に改善、完治することを目指さない疾患だからこそ日々の管理が重要です。
体重管理
猫の関節炎の管理で最も重要なのが体重管理です。
関節炎の猫での10〜20%が肥満であり、太っている猫では関節炎のリスクが通常の猫の5倍にのぼると言われています。
体重が増えすぎると、関節に体重がかかりすぎてしまい負担が大きくなります。
関節炎になってしまってからでも、体重管理を行うことは症状の改善や病気の進行を遅らせるのに重要です。
環境改善
関節炎のある猫は、関節炎になる前のように動きたいけれどそれが難しいというストレスを感じています。
例えば、ご家族と一緒に2階で寝ていた猫では階段の登り降りの際に関節炎のある足に体重がかかるのがストレスになりますね。
意外と見落としがちなのが、水を飲むときや食事を食べるときのお皿です。
猫が食事をしているときの様子を観察してみてください。
猫の関節炎が前肢に多いのに、お皿が平らだと首をおろすのに前肢部に体重がかかります。
他にも、猫のトイレについても改善点があるかもしれません。
猫のトイレで囲いがあるタイプは、猫砂が飛びづらく猫の安心感もあるため人気です。
しかし関節炎の猫にとってはトイレのたびに囲いを飛び越えなければならずストレスを感じているかもしれません。
このように、関節炎になる前に選んでいた猫の用品を変更してあげるのも良いでしょう。
疼痛管理
猫の関節炎の痛みを、鎮痛薬やサプリメントで軽減することも可能です。
痛みを抑えることは、適度な運動や食欲の増進による筋肉の維持に非常に重要です。
猫の鎮痛薬にはいくつかの種類がありますが、飲み薬をお家で飲ませることが難しい猫やご家族には、数週間〜数ヶ月効果が持続する注射薬もあります。
ご家庭に合った薬剤を選択しましょう。
リハビリテーション
関節炎になってしまった猫が、関節の痛みによりその関節をなるべく使わないように生活していると、その関節を支える筋肉が落ち、関節は固まっていきます。
そのような事態を避けるために関節炎のリハビリテーションを行うのが有効です。
猫のリハビリテーションは、
- 関節部分の血流を改善するマッサージ療法
- 人間が関節を動かしてあげる徒手療法
- バランスボールなどで猫が関節に適度に体重をかけるバランス療法
- レーザー光線などで遊び感覚で行える運動療法
などがあります。
電気刺激や医療用レーザーを利用した動物病院で行えるリハビリテーションも有効です。
これらのリハビリテーションには実施するのに適切な時期があり、その時期や方法を間違うと関節炎の痛みを悪化させてしまうこともあります。
実施前には必ずご相談ください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は猫に多い関節炎について解説いたしました。
近年、猫を家族として大切に考えている飼い主様の増加により猫も高齢まで生きることが可能になってきました。
大切にしている愛猫が実は痛みを我慢して暮らしていると考えると、飼い主様としてはどうにかしてあげたいと思いますよね。
当院では関節炎の猫に対し、その原因とご家族に合った緩和ケアをご一緒に考えていきたいと考えています。



愛猫の関節や活動変化が気になる方はぜひ、当院までご相談ください。

