犬の食事にチューブ?|食事を摂れなくなった犬のチューブフィーディングについて解説
「愛犬が食事を摂らなくなってどうしたらいいかわからない…」
という経験がある方はいらっしゃいますか?
食べることが好きな犬は多いので、食事を摂らなくなるととても不安ですよね。
犬が食事を摂らなくなってしまうと、
- 犬は数日くらい食べないと問題なのか
- 原因の病気がはっきりするまで食事を与えない方がいいのではないか
- 無理やりでも与えた方がいいのか
など、飼い主様にとってわからないことが多いでしょう。
犬はさまざまな原因で食事が摂れなくなります。
しかし、食事が摂れない状態を長期間放置しておくことは非常に危険です。
今回は、自力で食事をすることができない犬に栄養を与える方法の一つであるチューブフィーディングについて解説します。
ぜひ最後まで読んでいただき、愛犬が自力で食事を摂れなくても栄養管理ができるようにしておきましょう。
チューブフィーディングとは
チューブフィーディングとは、医療用のチューブを使用して動物に餌を与えることを指します。
人間は具合が悪いとき、食欲がなくなりますよね。
それでも、「食欲がなくても、栄養を摂らないと良くならない」と頭で考え、食べられるものを探し、自ら食事を摂ります。
しかし、犬はそのように考え行動することはありません。
犬が自力で食事を摂らなくなったとき、原因となる病気の治療をするのはもちろん、それとは別に栄養を摂らせる必要が出てきます。
チューブフィーディングは、犬の具合が悪く食事を摂りたがらないとき、自力で食べなくても腸から栄養を取ることを可能にします。
犬に強制的に食事を摂らせる方法もありますが、嫌がる犬も少なくありません。
チューブフィーディングのメリットは、犬への精神的な負担があまりないことです。
犬への負担が少ないとご家族にとっても栄養管理を継続しやすく、長期の栄養管理に適しています。
一方で、チューブを設置するためには麻酔をかけたり、手術が必要になることもあるため、身体的な負担は多少あるのがデメリットです。
食事を摂れないことの危険性
「犬は数日食事を摂らなくても大丈夫」とよく言われますが、獣医学的にこれは間違いです。
重篤な病気や長期間の絶食で腸から栄養を取れない状態が3日以上続くと、低栄養という状態になり、体にはさまざまな影響がでるようになります。
腸から栄養を摂ることには、
- 消化管への血流の確保
- 消化管の粘膜の保護
- 消化管の運動の刺激
- さまざまなホルモンの産生と分泌
などの役割があります。
これらを維持することは、消化管粘膜への細菌の侵入の阻止や、体を正常に保つためのさまざまな活動に必須です。
自力で食事が取れない状態を放置しておくと、消化管の活動が停止し体を正常に保つことができなくなります。
そのような状態になると、原因となった疾患の悪化とは別の問題が出てきたり、原因の疾患の治癒に遅れが出てしまい悪循環となる恐れがあります。

チューブフィーディングの種類
チューブフィーディングには、体のどの部位にチューブを設置するかによっていくつかの種類があります。
ここからは、それぞれについてメリットとデメリットをご紹介します。
経鼻食道チューブ
経鼻食道チューブは、鼻の穴から食道までチューブを通す方法です。
チューブを設置する過程で痛みが少ないため、全身麻酔は必須ではありませんが、多少の不快感があるので必要に応じて麻酔をかけることもあります。
設置してからは10日ほど維持することができ、簡単に設置できるのがメリットです。
経鼻食道チューブのデメリットには、
- チューブが細いため与えられる流動食が限られる
- 鼻や喉の疾患がある際には使用できない
- 嘔吐するとチューブの先端が反転してしまうことがある
などがあります。
チューブの先端が反転してしまって食道からずれてしまうと、与えたフードが気道に入ってしまう恐れがあります。
気道にフードが入ってしまうと誤嚥性肺炎を起こしてしまう可能性があるので注意が必要です。
食道瘻チューブ
食道瘻チューブとは、手術で食道に穴をあけ、そこにチューブを設置する方法です。
食道瘻チューブは全身麻酔による手術で設置しますが、
- 一度設置すると数ヶ月維持することができる
- 設置手術は難しい手術ではなく、大きな傷を作ったり長時間の麻酔が必要ない
- 経鼻食道チューブと比較して太いチューブを設置できるため、与えられるフードの種類が多い
など、ご家族の管理が簡単でメリットが豊富です。
食道瘻チューブのデメリットは、
全身麻酔が必要であることと、チューブの種類によっては嘔吐で反転してしまう恐れがあることです。
胃瘻チューブ
胃瘻チューブは、全身麻酔で胃に穴をあけ、そこにチューブを設置する方法です。
基本的に内視鏡で設置することができるため、開腹手術が必要になることは少ないです。
食事が摂れなくなったときに人間でもよく聞く方法ですよね。
胃瘻チューブは、設置すると半年以上維持することができ、維持管理も難しくありません。
胃瘻チューブのデメリットは、
- 全身麻酔で設置することになる
- 設置後しばらく抜去することができない
- 選択できない疾患や合併症が多い
などがあります。
そのため、胃瘻チューブは中〜長期的に栄養治療が必要で、全身麻酔に対する負担が少ない犬に適しています。

まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は犬のチューブフィーディングについて解説しました。
何らかの原因により犬が食事を摂れなくなったとき、ご家族としてはなんとかして食事を摂らせたいと思いますよね。
そのような状態が長く続くと、犬にとってもご家族にとっても大きなストレスになることがあります。
当院では食事が摂れなくなった犬について、それぞれの犬とご家族に合った対応を提案しています。
犬の食事でお困りのことがあれば一度ぜひ、当院までご相談ください。
