「以前に比べて、散歩の途中で座り込んでしまうことが増えた」
「愛犬の口の中をふと見ると、歯ぐきの色が以前より白っぽく感じる」
「最近は寝ている時間が長くなり、名前を呼んでも反応が薄い」
このようなことを体験したことがある飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか?
これらの症状には犬の慢性貧血が隠れている場合があります。
犬の慢性貧血は完治が難しい疾患が潜んでいることが多く、緩和ケアが必要になることも少なくありません。
この記事では、犬の慢性貧血が起こる仕組みや、自宅での緩和ケアについて詳しく解説していきます。

ぜひ愛犬にとっての最善の選択肢を考えるきっかけにしてみてください。


犬の慢性貧血とは
犬の慢性貧血とは、血液中の赤血球が徐々に減っていき、酸素を全身に運ぶ能力が長期間にわたって低下した状態のことです。
急に出血が起こる急性貧血とは異なり、長い時間をかけて進行するのが特徴です。
犬の慢性貧血を引き起こす主な疾患としては、以下のようなものが挙げられます。
- 慢性腎臓病
- 免疫介在性溶血性貧血
- 悪性腫瘍
- 慢性的な消化管出血
- 内分泌疾患
犬の慢性貧血は体がゆっくりと酸素不足に慣れてしまうため、初期の段階では飼い主様が異変に気づけないケースも少なくありません。
しかし、細胞レベルでは深刻な酸欠状態が続いており、臓器には大きな負担がかかっています。
愛犬の元気が少しずつなくなってきたと感じたら、貧血が隠れている可能性があり、注意する必要があります。
犬の慢性貧血の治療とQOL
犬の慢性貧血の主な治療は、貧血の根本原因となる疾患の治療です。
その上で、投薬や輸血によって赤血球の数値の安定を目指します。
しかし完治が難しい病気が背景にある場合も多く、痛みや息苦しさを解消しつつ生活の質(QOL)を高く保つことに重点を置くことが大切です。
治療とケアのバランスを考え、愛犬にとって最もストレスの少ない選択をしてあげましょう。


犬の慢性貧血の緩和ケアでできること
緩和ケアとは、病気の完治を目指すのでなく、犬が抱える心身の苦痛を和らげるためのアプローチです。
貧血が進行すると、少しの動きでも動悸や息切れが起きやすくなるため、日常生活の中に工夫を取り入れる必要があります。
飼い主様が自宅で実践できるケアの具体例をいくつか確認してみましょう。
- 痛みや不快感の緩和
- 酸素環境の整備
- 温度調節
- 食事の工夫
- 生活動線の見直し



それぞれのケアについて、詳しいポイントを解説していきます。
痛みや不快感の緩和
貧血そのものに強い痛みはありませんが、体が重だるい感覚や息苦しさは大きな不快感を伴うものです。
原因疾患によっては内臓の痛みや関節の痛みが併発しているケースも少なくありません。
獣医師と相談の上で、適切な鎮痛薬や抗炎症薬を使用し、体全体の不快感を取り除いてあげることが大切です。
愛犬がリラックスして深く眠る時間は、体力の回復や心の安定に大きく寄与します。
酸素環境の整備
貧血が深刻になると、十分な酸素が脳や全身に行き渡らなくなり、犬は息苦しさを感じます。
こうした苦痛を和らげるためには、家庭用の酸素濃縮器や酸素ハウスをレンタルして設置するのが効果的です。
高濃度の酸素を吸うことで、浅くなっていた呼吸が落ち着き、リラックスして眠れる時間が増えるでしょう。
愛犬が楽に息ができる環境を作ることは、緩和ケアにおける優先事項の一つといえます。
温度調節
血液は全身に熱を運ぶ役割も担っているため、貧血の犬は体が冷えやすくなっています。
体温が下がると免疫力も低下し、さらに体力を消耗してしまうという悪循環に陥りかねません。
室温を常に一定に保つことはもちろん、柔らかい毛布やペット用のヒーターを活用して、体を優しく温めてあげてください。
ただし、低温やけどには十分に注意し、自分で移動できない場合はこまめに体位を変えて確認しましょう。
食事の工夫
貧血の状態では食欲が落ちることが多いですが、体を維持するために食事は欠かせません。
一度にたくさん食べるのが難しい場合は、食事の回数を増やして一回あたりの量を減らす工夫をしてみましょう。
少し温めて香りを立てたり、流動食に近い形に加工したりすると、少ない力で効率よく栄養を摂取できます。
無理やり食べさせることは大きなストレスになるため、愛犬が好む味や食感を探りながら、寄り添う姿勢が大切です。
生活動線の見直し
慢性貧血になると普段は何気なく移動している場所でも、疲労感を感じるようになることも少なくありません。
トイレや水飲み場は、愛犬が休んでいる場所から数歩で届く範囲に移動しましょう。
段差がある場所にはスロープを設置し、足が滑らないようにマットを敷き詰めるなどの配慮も必要です。
体力を無駄に消耗させない環境作りは、自分で動きたいという意欲をサポートすることにも繋がります。


まとめ
慢性貧血を抱える犬との生活では、日々の穏やかな変化を見逃さない観察力と、負担を減らすための工夫が求められます。
病気そのものを治すことが難しくても、緩和ケアによって、犬の表情が和らぐ場面を作ることは可能です。
今の愛犬にとって何が一番の幸せなのかを主治医と相談しながら、後悔のない時間を過ごしましょう。
当院では緩和ケアを専門に診療をおこなっています。



ご家庭でのケアに限界を感じたり、愛犬の様子に不安を感じたりしたときは、当院までお気軽にご相談ください。










