猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症【猫エイズ】|実際の症状について獣医師が解説

猫免疫不全ウィルス感染症(FIV)

「猫エイズってどんな病気?」
「うちの猫は外に出るけど大丈夫なの?」
「治る病気なのか知りたい」

このような疑問を持つ飼い主様も多いのではないでしょうか。
猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)は、一度感染するとウイルスを排除できない病気であり、猫の免疫力をじわじわと低下させる特徴があります。
すべての猫が発症するわけではありませんが、正しい知識を持つことで、猫の健康を守る選択肢が広がります。

ここでは、猫エイズの原因・症状・診断・治療方法についてわかりやすく解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、猫免疫不全ウイルス感染症についての知見を深めてください。

目次

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)とは?

猫免疫不全ウイルス感染症とは、猫免疫不全ウイルス(FIV)による感染症です。
猫免疫不全ウイルスは、ヒトのHIVと似た性質を持つウイルスで、猫の免疫力を低下させる病原体です。
ウイルスに一度感染すると完全に排除することはできず、長期的に免疫力が弱まってしまう可能性があります。

ただし、「FIV陽性=すぐ発症する」というわけではありません。
無症状のまま長期間元気に暮らす猫も多く、発症の仕方には個体差があります。また、完全室内飼育の猫では感染する機会が少ない一方、外に出る猫では15〜30%が感染しているといわれています。

室内飼育でリスクは大きく減らせますが、完全にはゼロにならない点には注意が必要ですね。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の感染経路は?

FIVの感染力は強くありません。
主な感染経路は咬傷(猫同士のケンカ)です。

  • 空気感染はしない
  • 同じ食器の使用などでは基本的に感染しない
  • 母猫から子猫に感染する例はある
  • ヒトには感染しない

といった特徴があります。

外でのケンカ経験がある猫は、とくに感染に注意が必要です。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の症状は?

猫免疫不全ウイルス感染症は病期によって症状が大きく変化します。

急性期

  • 発熱
  • 下痢
  • 元気食欲の低下

急性期では感染から数週間で一時的に体調を崩すことがあります。

無症候キャリア期

無症候キャリア期では症状はほとんどありません。
この時期は数年〜十数年続くこともあり、この期間は健康な猫と変わらず生活できます。

持続性リンパ節腫大期

持続性リンパ節腫大期では全身のリンパ節が腫れてくるのが特徴です。
リンパ節を触るとしこりのように感じることがあります。

エイズ関連症候群期

エイズ関連症候群期では免疫力が落ち、さまざまな病気を併発しやすくなります。
とくに以下のような病気が目立つため注意が必要です。

  • 治りにくい口内炎
  • 歯肉炎
  • 上部気道炎(くしゃみや鼻水の悪化など)

後天性免疫不全症候群期(AIDS期)

後天性免疫不全症候群期では免疫力低下によって深刻な症状が出ます。

  • 脳炎
  • 重度の感染症
  • 腫瘍
  • 骨髄機能低下による貧血や血球減少

発症してしまうと体調管理が難しく、全身状態が急激に悪化することもあります。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の診断は?

猫免疫不全ウイルス感染症は主に血液検査で診断されます。

ただし、以下の注意点があります。

  • 感染から1〜2ヶ月は偽陰性の可能性がある
  • 母猫が感染している場合、生後12週までは移行抗体で偽陽性になることがある

必要に応じて再検査を行い、症状などと合わせて総合的な判断が必要です。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の治療は?

猫免疫不全ウイルスに感染していても、発症していなければ治療の必要はありません。
健康な猫と同じように生活できる子も多くいます。

症状が出てきた場合は、状況に応じて治療を行います。

  • 抗炎症薬
  • 抗生剤
  • 抗真菌薬
  • 駆虫薬
  • 補液
  • 疼痛管理

など、症状を緩和しながら生活の質を保つための治療が中心です。

抗ウイルス薬も存在しますが、効果には個体差があり、ウイルスを完全に排除することはできません。
そのため、感染後は「なるべくストレスをかけない生活環境を整えること」がとても大切になります。

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)の治療のみとおしは?

  • 発症しなければ長く元気に過ごせる猫も多い
  • 症状が進行すると予後は不良
  • ストレスの少ない生活環境が非常に重要

FIVは「感染=すぐ発症」ではありません。
発症させないための生活環境がとても大切です。

多頭飼育で気をつけることは?

FIV陽性の猫と、陰性の猫が同居する場合は以下に注意しましょう。

  • 感染猫がいる場合、他の猫はワクチン接種を検討する
  • 咬傷が起きないように生活環境を整える
  • 必要に応じて生活スペースを分ける

FIVはワクチンを接種していても、100%感染を防げるわけではありません。
しかし、感染のリスクを減らすことは可能です。また、猫同士の相性を見ながら、必要に応じて生活スペースを分ける工夫をしていきましょう。

猫同士の争いごとが減るだけでも、感染リスクは大きく下がります。

まとめ

猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)は、一度感染するとウイルスを排除できませんが、発症しなければ長く健やかに暮らすこともできます。
ストレスの少ない生活・健康管理・定期的な受診により、発症を防ぎながら生活の質を保つことが大切です。

猫のFIVが心配な場合や検査を希望される場合は、いつでも当院までご相談ください。

在宅緩和ケア専門動物病院「犬と猫の緩和ケア」
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