愛犬が自発性慢性角膜上皮欠損になってしまったら 治療のためにご家庭でできることを解説

眼の病気 再発性角膜びらん

愛犬が自発性慢性角膜上皮欠損になってしまったら 治療のためにご家庭でできることを解説

自発性慢性角膜上皮欠損は、犬にとっても飼い主様にとっても悩ましい病気です。
愛犬が頻繁に目を痛がる様子を見ているのはつらいですよね。
一度良くなったのにまた悪くなってしまうことも多く、何度も通院を繰り返す中で、本当に治るのか心配になってしまうことでしょう。
自発性慢性角膜上皮欠損は完治に時間がかかることも多いですが、根気強くケアしていくことで治療を成功させることができます。

今回は、自発性慢性角膜上皮欠損の症状や治療法、ご家庭でできるケアについて、わかりやすくご紹介します。

ぜひ愛犬の自発性慢性角膜上皮欠損のケアにお役立てください。

横を見ているボクサー犬
目次

自発性慢性角膜上皮欠損とは?

「角膜」とは、黒目の表面を覆う透明な膜のことです。
この角膜に傷がついた状態を「角膜潰瘍」といいます。
通常の角膜潰瘍であれば、点眼薬や眼の保護などの治療を行い、1週間前後で良くなります。
例えば眼をぶつけたりひっかいたりして、一時的に傷がついた場合などですね。
それに対し、自発性慢性角膜上皮欠損は、角膜潰瘍が治らず、一度良くなっても再発を繰り返してしまう病態です。
角膜に傷ができると新しく角膜上皮がつくられて眼球にくっつくのですが、自発性慢性角膜上皮欠損では角膜上皮と眼球の接着が悪くなっています。
新しい角膜上皮がはがれて傷が修復できず、角膜潰瘍を繰り返してしまうのですね。

なぜ角膜上皮の接着が悪くなってしまうのか、詳しい原因はわかっていません。

自発性慢性角膜上皮欠損の症状

自発性慢性角膜上皮欠損になると、眼の痛みの症状や見た目の変化がみられます。

次のような様子がないか見てみましょう。

  • 目を開けづらそう、しょぼしょぼする
  • 涙や目やにが多い
  • 目をこする様子がある
  • 白目が充血している
  • 黒目が白っぽく見える

自発性慢性角膜上皮欠損では、「治療をして症状がなくなったと思ったらまた症状が出て…」という状況を繰り返すことが多いです。

自発性慢性角膜上皮欠損の治療の流れ

角膜潰瘍になってしまったとき、まず行うのは点眼薬での治療です。
眼の表面を保水して傷の修復を助ける点眼薬や、抗菌剤の点眼薬などを使います。
角膜を保護するためのコンタクトレンズの装着や、一時的に瞼を閉じておく処置をすることもありますね。
これらの治療を行なっても角膜潰瘍が治らないときには、角膜潰瘍が治りにくい原因を調べるために検査をします。
角膜潰瘍が治りにくい原因は自発性慢性角膜上皮欠損だけではなく、患部の細菌感染や、他の病気がある場合などさまざまです。
中には内臓の病気が原因になっているケースもあるため、眼の検査に加えて、血液検査や画像検査などを行うこともあります。

自発性慢性角膜上皮欠損の場合、通常の角膜潰瘍の治療だけでは良くなりません。
自発性慢性角膜上皮欠損では、病変部の角膜上皮が浮いて剥がれた状態になっており、浮いた角膜上皮を取り除く処置(デブリードメント)を行います。
さらに、角膜の表面を削って細かい無数の傷をつける処置を行い、角膜上皮の接着を促します。
1回の治療では完治せず、これらの処置を数日〜1週間おきに繰り返し行うことが多いです。

自発性慢性角膜上皮欠損のケアのためにご家族ができること

自発性慢性角膜上皮欠損は治療が長期に渡ることがよくあります。
治療が長引くのは、この病気が治りにくい特徴をもっているためであり、決して飼い主様の責任ではありません。
そのうえで、ご家庭でのケアを続けていただくことにより、回復の手助けをしてあげることができます。

ご家族ができることをお伝えしますので、参考にしてみてください。

エリザベスカラーを着用する

眼の痛みや違和感があると、犬は眼を掻いたり擦り付けたりします。
エリザベスカラーを欠かさずに着用して、眼の自傷を防ぎましょう。
カラーを付けっぱなしにすることは、犬に不自由な思いをさせているようでかわいそうに感じてしまいますよね。
お気持ちはわかりますが、一時的にカラーを外したり柔らかいものに変更したりすることはおすすめしません。
そのせいで眼に傷がついてしまった場合、治療が長引いて犬も飼い主様もつらい思いをしてしまいます。
手足が眼に届くと掻いてしまいますので、ある程度の硬さと長さのあるものを常時着けるようにしてください。
カラーを着けて生活していれば、犬は比較的すぐ慣れることが多いです。
家の中で繰り返しぶつかってしまうようであれば、家具の位置をずらすなどぶつかりにくいように空間を工夫してあげましょう。
ごはんが食べにくいときは、お皿を高さのあるものに替えてみてください。

点眼薬を指示通りに使う

自発性慢性角膜上皮欠損は点眼薬だけでは治りませんが、状態を悪化させないためにも点眼薬を継続することは大切です。
点眼薬が複数処方されることも多く、大変ではありますが種類と回数を守って点眼してあげてください。
記録をつけてご家族で共有できるようにすると安心ですね。
点眼を嫌がる犬では、暴れたり噛んだりしてしまうこともあるかもしれません。
「点眼=嫌なこと、怖いこと」という認識を変えるために、おやつやおもちゃなど犬の好きなものを活用してみましょう。
無理に抑え込んで点眼すると余計に嫌がるようになるため、抵抗される前にさりげなく点眼を終えられると良いですね。
上手くいくコツは、犬が落ち着いているときに気付かれないよう後ろから点眼することです。
回数を重ねることで飼い主様も点眼が上手になり犬も慣れていきますので、諦めず取り組んでみてください。

根気強く治療を続ける

繰り返しにはなりますが、自発性慢性角膜上皮欠損は本当に再発の多い病気です。
再発してしまう病気だから仕方ないと考えて、これまでの努力が無駄にならないよう、気長に治療を続けてあげましょう。

まとめ

自発性慢性角膜上皮欠損は、治療が長引くことが多いやっかいな病気です。
大変ではありますが、根気強く治療を継続することで完治を目指すことができます。

自発性慢性角膜上皮欠損でお悩みの方は、ぜひ一度当院にてご相談ください。
どのようなかたちで治療を進めていくのが良いか、一緒に考えていきましょう。

在宅緩和ケア専門動物病院「犬と猫の緩和ケア」
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