犬のリンパ腫と末期の緩和ケア|緩和ケアと飼い主さまにできるサポート

飼い主に首周りを撫でられる犬

犬のリンパ腫は、免疫の働きを担うリンパ球が腫瘍化し、全身に広がっていく悪性腫瘍です。
犬の腫瘍の中でも発生率が高く、犬に発生する腫瘍の約7〜24%を占めるといわれています。
リンパ腫が進行すると、
「これからどのように過ごさせてあげればよいのか」
「治療を続けるべきか、負担を減らす選択がよいのか」
「愛犬にとって最善の選択が何か、わからない」
と悩まれる飼い主さまも少なくありません。
リンパ腫の治療は積極的に抗がん剤治療を行うことだけが選択肢ではありません。
愛犬の苦痛をできる限りやわらげ、穏やかな時間を守る緩和ケアも大切な選択肢です。

本記事では、犬のリンパ腫とはどのような病気か、緩和ケアの考え方、飼い主さまにできるサポートについてわかりやすく解説します。

ぜひ最後までお読みいただき、リンパ腫の緩和ケアについての理解を深めていただければ幸いです。

飼い主に首周りを撫でられる犬
目次

犬のリンパ腫とは

犬のリンパ腫とは、免疫の働きを担うリンパ球が腫瘍化して増殖する病気です。
リンパ球は

  • リンパ節
  • 脾臓
  • 骨髄
  • 消化管

など、全身のさまざまな部位に存在しています。
そのため、リンパ腫は特定の臓器だけでなく、全身に症状があらわれやすいという特徴がある腫瘍です。

リンパ腫は犬では比較的多くみられる悪性腫瘍で、発生場所によって次のような型に分類されます。

  • 多中心型リンパ腫
  • 消化器型リンパ腫
  • 縦隔型リンパ腫
  • 皮膚型リンパ腫

いずれの型の場合も病状が進行すると

  • 食欲低下
  • 元気消失
  • 体重減少

などの全身症状がみられます。
リンパ腫では病状や進行度に応じた治療やケアの選択が重要です。

カルテの上に置かれる聴診器とペン

犬のリンパ腫の治療とQOL

犬のリンパ腫の治療は抗がん剤投与が中心となります。
寛解(症状がほとんどなくなること)率は比較的高いものの、再発するケースが多く見られます。
そのため、治療の目的が完治ではなく、QOLの維持と延命になることも少なくありません。

リンパ腫の治療の段階や体調の変化に応じて、「どのような医療がその子にとって負担が少ないか」を考えることが大切です。

犬のリンパ腫の緩和ケアを考えるタイミング

犬のリンパ腫の緩和ケアは、必ずしも末期になってから始めるとは限りません。
次のような症状が見られたら、緩和ケアを選択肢として検討するタイミングといえるでしょう。

  • 治療に対する反応が弱くなってきた
  • 治療の副作用による負担が大きくなってきた
  • 年齢や基礎疾患の影響で積極的な治療が難しくなってきた
  • 食欲や元気がなく、呼吸が苦しくなってきた
  • 痛みを訴え、QOLが下がってきた

緩和ケアは治療をあきらめることではありません。
愛犬が少しでも穏やかに過ごせる時間を守るための医療です。

犬の手とそばに置かれる人の手

犬のリンパ腫の緩和ケアで行うこと

緩和ケアとは、延命よりQOLを重視したケアのことをさします。
現在感じている痛みや苦しさをできるだけ和らげ、残された時間を穏やかに過ごすためのサポートを行うのが緩和ケアです。
ここでは、犬のリンパ腫で行われるおもな緩和ケアについてご紹介します。

痛み・不快感の緩和

リンパ腫の進行に伴い、痛みや違和感、呼吸のつらさがみられることも。
こうした症状は、QOLを大きく低下させる原因となります。
緩和ケアでは、愛犬が感じているつらさをできる限り和らげることを目的に、症状や体調に応じて鎮痛薬や抗炎症薬などを使用します。

食事や水分補給の工夫

リンパ腫が悪化して体力が低下すると、食事や水分が十分に摂れなくなることが多いです。
食事を無理に食べさせるのではなく、食べやすい形状を探してあげましょう。

  • 好きな食べ物や嗜好性の高い食事
  • 消化しやすいフードやスープ状の食事
  • こまめに水分補給し脱水症状を予防

このように食事を工夫することで、体力の消耗や栄養不足をできるだけ予防していきましょう。

快適な生活環境の整備

日常生活の負担を減らすことで、体へのストレスを軽減できます。
特に起き上がりや移動、排泄が楽に行える環境作りが重要です。

  • 滑りにくい床や、体を支えるベッドの準備
  • 寝床と排泄場所を近くに設置し、移動の負担を軽減
  • 排泄場所まで行くことが困難な場合は、おむつの利用
  • 寝たきりの場合は、床ずれ予防のためのマット利用
  • 床ずれ予防のために、こまめな体位変換

とくに床ずれは短時間でできてしまい犬のQOLを下げてしまいます。
骨が当たるところをよく確認して対処してあげましょう。

まとめ

犬のリンパ腫は一度症状がおさまっても、再発することが多い病気です。
闘病生活が続くと不安感が強くなり、心身ともにすり減ってしまう飼い主さまも多いです。
緩和ケアを取り入れてあげることで、残された時間を穏やかに過ごすサポートが可能です。

当院は緩和ケアを専門にしています。
緩和ケアを治療の選択肢のひとつとして、ご提案できます。

いつでもお気軽にご相談ください。

在宅緩和ケア専門動物病院 犬と猫の緩和ケア
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