犬と猫の鎮痛薬と緩和ケア|痛みをコントロールして穏やかな生活を送るために

同じペットベッドに入る犬と猫

犬や猫は本能的に痛みを隠す傾向にあります。
また、人間のように痛いと言葉で訴えることもできません。
犬や猫の見た目が普通でも強い痛みを抱えている可能性があります。
犬や猫を家族にもつ飼い主様の中には、犬や猫の高齢化に伴い病気の治療中に痛みの問題に直面される方も多いかもしれません。
慢性疾患や終末期ケア(緩和ケア)では、痛みの緩和は治療の最重要ポイントとなります。

この記事では、犬と猫の緩和ケアと鎮痛薬について詳しく解説いたします。

ぜひ、最後までお読みいただき、痛みで悩んでいる愛犬・愛猫のケアにお役立てください。

同じペット用ベッドに入る犬と猫
目次

緩和ケアの目的とは?

緩和ケアの目的には以下のようなものがあります。

  • 疼痛の緩和
  • 呼吸、消化など身体的苦痛の軽減
  • 精神ケア(不安の軽減)
  • 食事・栄養管理
  • 飼い主の心理的サポート

ペットの高齢化が進む現在、犬・猫の緩和ケアの重要性が高まっています。
緩和ケアでは上記の目的を達成することで、完治が難しい病気や終末期にある動物に対し、苦痛を和らげることができますね。

なかでも疼痛管理(痛みのケア)は、緩和ケアの最も重要な要素です。
痛みを放置すると、

  • QOLの低下
  • 回復の遅れ
  • 慢性痛への移行

など多くの問題の問題を引き起こします。
そのため、病気の治療と並行して痛みのケアを行うことは非常に重要です。

犬や猫は痛みを隠す習性があるため、飼い主様が症状を理解し、早期に対応するようにしましょう。

犬と猫の痛みのサインとは?

犬や猫の痛みを発見するには、日常の中でのちょっとした変化に気がついてあげる必要があります。
犬と猫でもそれぞれ異なる特徴があるため、それぞれ解説していきましょう。

犬の痛みのサイン

犬の痛みのサインには以下のようなものがあります。

  • 呼吸が荒い・早くなる
  • 食欲や元気がなくなる
  • 震える
  • 階段を嫌がる、歩き方がぎこちない
  • 触られるのを嫌がる

これらの行動は些細な変化かもしれません。
犬がはっきりと痛みを訴えるような行動をした際には、すでに強い痛みや不快感を生じている可能性があります。
はっきりと痛みを訴えるより前の行動に気がつけるように日頃から観察していきましょう。

猫の痛みのサイン

痛みを感じている猫には、以下のような行動の変化が現れることが多いです。

  • 隠れる時間が増える
  • グルーミングが減る、または過剰に舐める
  • トイレの失敗が増える
  • 元気や食欲がなくなる
  • 表情が険しい
  • 鳴かない

猫は犬よりも痛みを隠す生き物です。
違和感を感じる行動の変化があれば早めに動物病院を受診しましょう。

ケージの中のペット用ベッドで寝る犬

どのような場面で痛みのケアが必要?

緩和ケアとして痛みのコントロールが必要となるのはどんな場面でしょうか?
代表的な疾患をご紹介します。

がん(腫瘍性疾患)

腫瘍性疾患は、緩和ケアの対象として最も多い疾患です。

  • リンパ腫
  • 骨肉腫
  • 乳腺腫瘍
  • 口腔内腫瘍
  • 消化器系腫瘍

上記の中でも特に骨肉腫は強い疼痛が生じます。
がんの痛みは慢性的で強いことが多く、鎮痛薬を組み合わせてコントロールする場合もあります。

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは特に中年齢から高齢の犬に多く認められる疾患です。

首や腰の痛みを伴い、重症例では神経症状(足の麻痺など)を認めます。
急性期の痛みの緩和が回復に直結する場合もあります。

変性性関節症

変性性関節症(関節炎)は高齢の犬・猫で非常に多い慢性疼痛の原因です。
主な症状は下記のとおりです。

  • 歩きにくい
  • 立ち上がれない
  • 階段を嫌がる

変性性関節症は慢性的に痛みが続きます。
変性性関節症の治療では、疼痛管理のために鎮痛薬・理学療法・サプリメントなどを組み合わせていきます。

口内炎

猫の慢性歯肉口内炎は強い痛みを伴います。
抜歯などの外科的な処置の実施が難しい場合、鎮痛薬で痛みのケアを行います。
また慢性腎臓病によっても口内炎が引き起こされることがあります。
慢性腎臓病は特に高齢の猫に多い疾患で、

  • 嘔吐・倦怠感・食欲不振
  • 貧血
  • 口内炎による痛み

といった症状で悩まされるケースが多いです。
ただし慢性腎臓病では薬剤が腎臓に大きくダメージを与える可能性があるため、薬剤選択や投与量に注意が必要です。

犬・猫の緩和ケアで使われる鎮痛薬

犬と猫の痛みのケアに使用される鎮痛薬はさまざまなものがあります。
その子が持っている疾患によって使い分けるため、使用に関しては獣医師とよく相談して適切に使用していきましょう。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)

NSAIDsは炎症による痛みを和らげる薬です。
関節炎や腫瘍に伴う痛みでよく用いられます。
腎臓病・胃腸障害がある場合は、疾患の悪化の可能性があるため使用には要注意です。

オピオイド系鎮痛薬

オピオイド系鎮痛薬は、強い痛み(がん性疼痛など)に用いる薬です。
モルヒネ系・フェンタニル系などが代表的です。
強力な鎮痛作用があり、鎮静作用もあるため動物が落ち着きやすくなります。
腫瘍などの重度の痛みや終末期ケアで重要な役目があります。

神経系疼痛薬

神経系疼痛薬は神経痛、神経障害に対して有効です。
がんによる神経の圧迫による痛みや、慢性痛のコントロールでよく使われます。

ステロイド

ステロイドは炎症を強く抑え、腫瘍周囲の浮腫を軽減させる効果があります。
また食欲刺激作用もあります。
ただし長期間使用すると、多飲多尿や肝障害などさまざまな副作用の問題が起きてくるため注意が必要です。

畳の上のベッドで寝る猫

まとめ

犬や猫は痛みを隠すため、小さな変化も重要なサインとなります。
早期に発見し、痛みを和らげることで生活の質(QOL)が大きく向上します。
鎮痛薬にはさまざまな種類があり、抱えている疾患に応じて使い分けが必要です。
使用に関しては必ず獣医師の指示に従い、症状にあわせて適切に使用していきましょう。

当院は緩和ケアに力を入れています。
痛みの管理や、その子にあったケアの方法をご提案いたします。

慢性疾患の管理などでお悩みの場合はいつでもご相談ください。

在宅緩和ケア専門動物病院 犬と猫の緩和ケア
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