犬の骨肉腫は特に大型犬で多く見られる、骨にできる悪性腫瘍です。
犬の骨肉腫は進行が早く、転移しやすいという特徴があります。
愛犬が骨肉腫という診断を受けたとき、多くの飼い主様はショックを受けるかもしれません。
そして「この子のために何がしてあげられるだろう」と考えると思います。
この記事では、犬の骨肉腫と緩和ケアという選択肢について詳しく説明いたします。

ぜひ最後までお読みいただき、骨肉腫の治療の選択の参考にしてください。
骨肉腫とは
骨肉腫は、犬の骨にできる悪性腫瘍の中で最も多い病気です。
中高齢の大型犬に多く、特に四肢の骨に発生することが多く見られます。
骨肉腫になった際には以下のような症状がみられやすいです。
- 足をひきずる
- 歩き方が不安定になる
- 足が腫れる
- 活動量がへる
- 食欲や元気がなくなる
- 麻痺が出る
- 呼吸が苦しくなる
骨肉腫による痛みは非常に強く、日常生活に大きな支障がでてきます。
また骨が脆くなることから、病的骨折が起きてしまうケースも少なくありません。
骨肉腫の診断は以下のような検査を用いて行います。
- レントゲン検査(患部や胸部)
- CT検査
- 組織生検
骨肉腫は進行が早く高確率で肺に転移する病気です。
残念ながら診断時には肺へ転移していることも珍しくありません。
骨肉腫の基本の治療
骨肉腫は根治が難しい病気です。
腫瘍を切除しても、9割近くの犬が肺へ転移して亡くなってしまうという報告もあります。
そのため、治療の基本は「痛みを取り除くこと」と「できるだけ延命をさせてあげること」です。
骨肉腫の治療には次のような方法が選択されることがあります。
ただし、これらの治療を行っても余命は数か月〜1年程度となることが多く、「積極的な治療を選ぶか」「緩和ケアに切り替えるか」という選択が必要になることもあります。
外科手術(断脚)
骨肉腫はとても強い痛みを伴います。
そのため、治療の第一選択としては外科手術による患肢の切断(断脚)が必要となります。
外科手術は痛みの除去と、腫瘍の根治が主な目的です。
化学療法(抗がん剤)
抗がん剤治療は、外科手術後の補助療法として行われます。
骨肉腫の再発や、転移のリスクを下げることが主な目的です。
断脚を行ったあとに抗がん剤治療を実施すると、生存期間を伸ばせる可能性があります。
放射線治療
放射線治療は、様々な理由により手術が出来ない場合や、疼痛の緩和目的で補助的に実施されることがあります。


骨肉腫の緩和ケアで行われること
緩和ケアとは、延命よりも生活の質(QOL)を重視するケアです。
痛みや不安を取り除き、残された時間を穏やかに過ごすためのサポートを行います。
犬の骨肉腫も積極的な治療ではなく、緩和ケアを取り入れて犬のQOLを重視する選択が取られやすい病気ですね。



犬の骨肉腫で行われる主な緩和ケアをご紹介しましょう。
疼痛・不安の管理
骨肉腫は強い痛みが出る腫瘍です。
痛みはQOLの低下をまねく要因になります。
疼痛の軽減のために使用するのが、鎮痛薬です。
鎮痛薬はNSAIDsなどの抗炎症剤の他に、麻酔薬の仲間であるオピオイド系鎮痛薬のモルヒネやフェンタニルなどが使われます。
オピオイド系鎮痛薬はより強い疼痛を緩和させる薬です。
フェンタニルにはテープ剤タイプのものもあるため、自宅でのケアをしやすくするために獣医師に相談してみましょう。
強い痛みや環境の変化によるストレスなどを軽減させるために、鎮静薬や抗不安薬を使用する場合もあります。
生活環境の整備
骨肉腫の痛みなどから歩行が難しくなった犬にとって、家の中のちょっとした段差や滑りやすい床が大きな負担になることがあります。
以下のような工夫で生活をサポートしてあげましょう。
- 滑らないマットを敷く
- 食器やベッドの位置を調整する
- 段差を減らす
こういった配慮を行うことで、愛犬が快適に過ごすことができるでしょう。
また、愛犬が歩けなくなり寝たきりになってしまった場合、注意したいのは床ずれです。
床ずれを防ぐために、クッション性の高い敷物を敷いてあげたり、こまめに寝返りの補助を行ってあげましょう。
栄養や水分摂取の管理
骨肉腫になると痛みや腫瘍によって、身体全体の栄養状態が落ちてきます。
嗜好性や栄養価の高い食事を積極的に与えてあげましょう。
うまく立てずに食事が取れない場合は、食事の介助をしながら与えることも必要ですね。
水分摂取もとても大事で、場合によっては病院やご自宅で点滴の処置を行う場合もあります。
点滴に関しては必ず動物病院で指導を受けてから実施するようにしましょう。


まとめ
犬の骨肉腫は、強い痛みと進行の早さをもつ病気です。
しかし、緩和ケアを取り入れてあげることで、残された時間を穏やかに過ごすサポートが可能です。
当院では緩和ケアを専門としています。
愛犬の介護は心身ともに疲弊してしまう方も多いです。



緩和ケアを治療の選択肢のひとつとして、ご家族に寄り添った方法をご提案いたしますので、いつでもご相談ください。













